『Big Field』の閉店時間に店に行った。


潤から連絡が入っていたのだろう。
中に入るとボックス席に智さんが腕を組んで目をつぶって座っていた。
カウンターの中では瑠美奈さんがコーヒーを入れていた。


「翔さん、こんばんは!お久しぶり!もー、どこで何してたの?」

「ご迷惑とご心配をおかけしてすみませんでした。」

「さぁさぁどーぞ!」

智さんの所に案内された。



「この度は申し訳ありませんでした。」

どんな言葉を言ったって言い訳になる。
頭を下げられるギリギリまで下げて誠心誠意謝るしかなかった。


「翔くん、次はないと思ってよ?」

「はい。二度と潤を置いてどこかへ行くなんてことはしません。逃げません。」

「まぁ、事情が事情だしな。ある意味、翔くんも被害者だ。」

「俺が.........被害者.........。」

「そうだよ!でも、あの代議士も結局捕まったしな。翔くんがやった事は意味があったって事だ。」

.........そうだろうか?

「ま、俺が翔くんを許さないと言った所で、潤は翔くんがいなきゃダメなんだしな。本当によろしく頼むよ!」

「はい。本当にすみませんでした。」

もう一度、深々と礼をした。



「さぁ座って!はい、どーぞ!食べて下さい。」と言って、瑠美奈さんがコーヒーとプリンを出してくれた。

「確か、プリンが好きでしたよね?」

「はい。ありがとうございます。いただきます。」

1口食べる。

‼️

このプリン

あの『grandchild』で食べた物によく似ている。

「.........美味しいです。」

あの苦しかった時に助けて貰ったあのプリン。

あの喫茶店が閉店してから食べたいと思っても食べられなかったあのプリン。


あの時と一緒で自然と涙が出てきた。

あの時は悔しさと後悔の涙

今流れてる涙は.........、嬉しさとやっぱり後悔か。

「すみません。.........昔、辛かった時に喫茶店で食べたプリンに良く似ていて.................。そのプリンとコーヒーに救われたんです。ずっと食べたいって思ってたから。」

「もしかして.........、○○区の『grandchild』?」

「.........はい!ご存知ですか?」

「ご存知も何も.........、瑠美奈のじいちゃんとばあちゃんの喫茶店だよ。俺もそこでコーヒーの修行したんだ。」

「あぁ、そうだったんですか。だから.........。」


あの『grandchild』に初めて行った日の事を思い出し、また涙が出てきた。


『Big Field』の店が気になったのも、ここのコーヒーが俺好みだったのも、全て繋がってる気がした。

「優しい味でしたよね。俺、あの時『grandchild』のコーヒーとプリンでやり直そうと思えたんです。」

「そうだったの。」

「今日、このプリンと出会えてやっぱり運命を感じます。」



本当に俺は何してたんだろう。

潤と智さんだ、ちゃんと話せばわかってくれた事位わかるだろう。
でもだから尚更、許してもらえなかった時の事が恐ろしかったんだ。

自分の愚かさが情けない。



安心したのか止まらない涙を流しながらプリンを食べていた。

「翔さん、泣きすぎ(笑)」

瑠美奈さんが笑いながらもつられて涙を流していた。

横で智さんも笑ってる。

そこへ

「遅くなっちゃったー」

と潤が入ってきた。



「智~!!、翔さんを泣かしてる(怒)」


状況が読めない潤が、智さんが俺に説教でもしたんだと勘違いしていた。