神崎さんと話を終えてバックヤードに戻る。



俺の顔を見た智が「色々あんのはわかるが、今日の残り、ちゃんと接客すれよ」と言った。

「うん、わかってる。」


何とか仕事を終えて、智とカウンターに座る。

瑠美奈さんも店に来ていて、温かいスープを出してくれた。

しばらく無言で3人でスープを食べた。



「翔さんがいなくなった原因、父さんと関係してるみたいだ。」

「うん........」

「知ってたの?」

「.........実は、翔くんから手紙が届いた。」

「え?」

「詳しい事は書いてなかったけど、あの記事を書いたのは俺だと。潤の父親を殺したのは俺だと。潤を大切にすると約束しながら守れなかった事を詫びていた。幸せを願ってると。」

「.........。」

「内容が内容なだけに瑠美奈とも話してて、これを潤に話そうか迷ってた。決していい話ではないからな。ただこれを俺に送ってきたという事は、潤にもこの事を知って欲しいって翔くんが願ってるのかもしれないともな。」

「うん」

「まぁ、潤がそれを知った所で、もう昔の話だし、翔くんが悪い訳でもないしな」

「そうなんだよ。.........馬鹿だね、翔さん。父さんを殺しただなんて.........。」

翔さんにとって俺との関係は今や『恋人』ではなくて『加害者と被害者』になってるのかも知れない。



神崎さんがタウン誌の出版社に問い合せたけどお話出来ないと言われたと。
かなり厳重に内密にされてるらしく、神崎さんも二宮と櫻井は同一人物だと思う、と言っていた。



翔さんの消息が掴めなくなって半年が過ぎた。


本当に俺の前から翔さんは姿を消したんだ。

翔さんにとっても、俺の顔を見続けるのは事件を思い出して辛いのかもしれない。翔さんが起こした事件じゃないのに.........。



俺もそろそろその現実を受け入れなくてはならないと思う。
翔さんと次に会った時、弁護士になった俺の姿を見て欲しい。
その前に帰ってきてくれるのが1番なんだけど.........。


まずは司法試験に合格する為に必死で勉強しよう。


卒業後の進路は、俺は法律事務所に就職が内定、雅紀もバイトしていた事務所にそのまま就職する事となり、どっちが早く試験に受かるかお互い頑張ろうとなった。


そして


司法試験に合格出来たのは、それから2年後、雅紀と2人揃ってだった。





俺は翔さんに真っ先に報告した。


既読がつかない番号に。