1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月
翔さんからの連絡が途絶えて、どうする事も出来ないまま時間だけが過ぎていった。
満足に食事をしなくなった俺を、雅紀や智、瑠美奈さんが心配して世話をしてくれていた。
だってね
パスタを見れば翔さんに初めて作った和風パスタに喜ぶ顔が、サンドイッチを見たら翔さんと半分こした思い出が、生姜焼きは、ハンバーグはって全ての食べ物が翔さんに繋がるんだもん。
翔さんの月に1度の雑誌の連載は続いている。
『櫻井翔』じゃなく『二宮和也』って名前に変わってるけど。
東京近辺のカフェばかりだけど、写真と文章が翔さんのそれなんだ。
ペンネームにしたんだろうか?
そんなに俺から離れたくなった?
そんなに俺に見つかるのが嫌?
でも翔さんが東京にいる証だ。海外へ行ってないって事だけでも救われる。
いつか会えるかもしれないから.........。
俺の身体からあなたが付けた深紅の花は消えちゃったよ?消えたらまた付けてくれるって言ったじゃない。
それでも俺も必死で学校へ行き、バイトもこなした。
何かをしてた方がまだ気が紛れる。
そんなある夜
「いらっしゃいませ」
「こんばんは。久しぶり!」
「神崎さん、お久しぶりです」
「覚えててくれた?嬉しい。」
「ブレンドAでよろしいですか?」
「はい、お願いします」
神崎さんは翔さんの居場所知ってるんだろうか?
あれから翔さんとどこかで会った?
同じ出版の仕事。
翔さんが事件に巻き込まれてるとしたら、さすがに耳に入るんじゃないだろうか。
「智、翔さんの元同僚が来店してるんだ。話を聞きたいから休憩してもいいかな?」
「ダメだと言っても聞かないだろ?」
「だって翔さんの事知ってる唯一の人だもん。」
「.........わかった。」
「ありがとう。」
何でもいい。手掛かりが欲しい。
何か解りたい。
だけど
怖い気もする。
もしも もしも
この人とは普通に会ってたとしたら.........。
翔さんに嫌われたという現実を受け止められるのか.........。