1泊2日の小旅行



「ちょっとWikiで『宿命』のあらすじ調べたんだ!」

新幹線の中でスマホを見せてくれた。

「へぇー、さすが学生、予習も完璧で(笑)」

「ふふっ、本当は映像で見たかったけど、レンタルもなけりゃ配信も無くてさ。」

「そりゃ古いドラマだからな。」

「そうだよね、最近のドラマなら翔さん、記事は書かないもんね。」

「まぁ、映像で昔と今を比べられたらもっといいんだけどね。」

「愛する2人が家の事情で別れさせられて、女の人は御曹司と結婚させられるんだけど、男の人の方は医師になって独身を貫くんだって。で、御曹司が重い病気になって患者として病院に来る。そこに元彼がいて主治医になるって話。もう設定だけで辛いよね。もし翔さんに許嫁とかいたら.........、俺、翔さん刺して俺も死ぬ」

「おいおい、怖え~な(笑)ま、そんな者はいないし、潤以外と結婚しなきゃいけないなら.........、やっぱり死ぬな」

「.................、俺達、ヤバい奴らだね」

冗談を言い合って2人で笑った。

でも2人ともちょっと本気な所もある。
実際、潤と離れるなんてもう考えられない。
俺にとっては宝物以上の存在だから。



駅に着いて、レンタカーで取材開始だ。
役場からは、ドラマが流行った時に作ったという町巡りのパンフレットを郵送してもらっていたので、今の町と比較しながら巡る事にしていた。

「桜が綺麗だね」

「だな。ちょうといい時期だったな」

「俺、ちょっとお腹空いたな

「左に同じく」

「あのさ、ここのサンドイッチ、食べたいんだよね?」

と、潤がスマホでその店のHPを見せてくれた。

「この町の気になる場所も、見つけておいたんだ。」

「じゃあサンドイッチ食べながら、行く場所合わせよう。コーヒーも気になるしな。

「うん!」

こうやって、受け身だけじゃなく自分でも楽しもうとしてくれる所が嬉しい。そして、それは、俺が記事を書く事に困らないようにネタになるような所を探してくれてる証でもある。




店に入ってメニューを見る。

「このタマゴサンドが気になってたけど、フレンチトーストも捨て難いなぁ」

とズルい顔で俺を見る。

「いいよ、半分こしよう」

「ヤッター」

「最初からそのつもりだろ?」

「ふふふっ、バレたか」


食事をしながら巡るルートを決め、主人公2人が出会った学校、デートで使った喫茶店や公園などを巡った。


廃校になってたり、いくつかのお店は閉店してて建物自体が無くなっていたり、やはり80年代のドラマだけあって昔と同じ物は少なくなっていた。
だけどこの町がドラマを大切に思っているんだろう、跡地という事が分かる案内板が至る所にあった。


「この角度で写真を撮ったら綺麗じゃない?」

「見て見て!この写真と同じ風景だよ!」

「ねえねえ、あそこにデザートのキッチンカーかいるよ!プリン食べよう!」


楽しんでくれてる姿に、自然と笑みがこぼれた。


取材写真とは別に、潤の写真も沢山撮った。

レンズ越しの潤の笑顔にドキドキしてシャッターを押してしまう。

一体俺は、いつまで潤の姿にドキドキするんだろう。





愛しくて愛しくて


胸が張り裂けそうとは、こんな感情なんだと実感した。