当日
翔さんは俺の自宅まで迎えに来てくれた。
「酔ってて場所覚えてないかと不安だったけど、しっかり覚えてたよ」
「翔さん、この間はそんなに酔ってるように見えなかったよ?!」
そんな話をしながら翔さんの車に乗り込む。
「折角だから少し郊外の遠いカフェに付き合ってもらおうと思ってるんだけど、図々しいかな(笑)」
「いや、楽しみです!あんまり知らないカフェって行かないから」
「俺もさ、普段は仕事だから仕方なくって感じだけど、昨日の夜は楽しみでデートの前の日かって位ワクワクしてたよ(笑)」
翔さん.........
そんな冗談サラッと言わないでよ。
今の俺はそんな冗談も本気にしてしまうよ。
翔さんの車の助手席に乗って目的地に出発した。
翔さんの車は小ぶりな国産車で少し親しみが沸いた。
雰囲気からして左ハンドルの大型車でもおかしくはないから。
カーステレオからは静かなジャズが流れていて、これは翔さんのイメージ通りだな、なんて思った。やっぱり聴く音楽も大人なのかな?
「潤は普段どんな曲聴くの?」
俺の頭の中を見たかのようなグットタイミングの会話。
「大体は洋楽かな?俺、歌詞が分かる程英語得意じゃないから、何となく音がかかってるって方がいいんです。日本語の曲はどうしても歌詞が気になってそっちに引っ張られるから。ランダムに曲を流してるって感じ。」
「それ、分かる!原稿書かなきゃならない時、歌詞は邪魔だよな。だから俺も大体こんな感じよ。」
「それと、父の影響もあるかも。小さい時からカーステレオやリビングからは洋楽が流れれてマイケルだ、マドンナだ、と身近だったから」
「へぇー、カッコイイね」
「父は本当に俺の自慢です。顔は勿論カッコイイですし、心もまっすぐな人で尊敬出来る人なんです」
「じゃあ潤はお父さん似なんだね!」
「え?」
「だって潤だって顔は相当なイケメンだし『Big Field』での仕事ぶり見てたら真面目ないい奴だって事くらいわかるよ」
「翔さん.........。そんな風に見てくれてたなんて.........。恥ずかしいけど嬉しいです」
「そんなハンサムなお父さんに会ってみたいな」
「翔さんのご両親もやっぱりジャズがお好きなんですか?」
「うちの父もいろんなジャンルの曲を聴いてたな。よく親父の部屋からCD借りては聴いてたな。」
そんな話をしながら目的地のカフェに向かった。