あ~ぁ、今日からさくらいさんは取材で来ないというのに、昨日はちゃんと行ってらっしゃいも言わないままにしてしまった.........。しかも多分超機嫌悪って感じの態度のまま。
いや、彼女さんと来てたんだから俺の態度なんて気にもしてないだろう。
昨日、ずっと自分の感情と向き合った。
やっぱり俺はさくらいさんに恋してるんだ。
さくらいさんがどんな人なのか、詳しく知らない。
だけど、毎日さくらいさんが来るのを待ち焦がれてるのは確かだ。
知らないうちに好きになってた。
いや、もしかしたら初めて来店されてメニューをじっと見てた時から好きだった、一目惚れってやつだと思う。
雅紀の推理は正しかった。
昨日のモヤモヤは、あの女性へのヤキモチ。
そして、女性だという羨ましさ。俺はああやってさくらいさんの隣にいられないという悔しさ。
あんな態度してしまって、取材から帰ってきたさくらいさんはまたこの店に来てくれるだろうか.........。
「いらっしゃいませ」
ドアから入ってきたのは.........、昨日、さくらいさんと一緒に来た女性だった。
「こんにちは」
「こちらでお召し上がりですか?」
「テイクアウトで、ブレンドAを」
「かしこまりました。少しお待ち下さい」
今日はテイクアウトなんだ.........。さくらいさんが出張中だからなのか。
「お待たせ致しました、ブレンドAです」
「ありがとう」と言って出ていった。
次の日もまたその女性は来店した。
「今日は店内で」そう言うと、いつもさくらいさんが座る席に着いた。
「お待たせ致しました。ブレンドAでございます」
「ねぇ」と俺を見上げた。
「はい」
「櫻井翔さん、わかる?」
「はい」
「彼は毎日来てるんじゃないの?」
「はい、ほとんど毎日」
「今日は来るかしら?」
え?
「取材で東京を離れるって言ってましたけど。」
「あ、そうなんだ」
「ご存知ないんですか?」
「うん、一昨日、数年ぶりにバッタリ会って。久しぶりだったからもっと話したいと思ったの。ここ、彼、常連っぽかったから。」
「ええ、ほぼ毎日いらして頂いてます。お帰りになったらお客様がいらした事をさくらいさんにお伝えしますか?」
「ううん、いい、いい!またこんくらいの時間にでも来させてもらう。」
「わかりました。ごゆっくりどうぞ😊」
一礼して戻る。
彼女じゃないっ!
ましてや奥さんでも!
数年ぶりにバッタリ会った?そうなんだ!
な~んだ、そうならそうって言ってくれればいいのに!
へんな誤解しちゃったよー。
ふふふ
顔がニヤけたままバックに戻ると
「潤、顔!」と智が呆れてた。
あっ!
俺、この前さくらいさんに酷い態度取っちゃった.........。