今俺はある南の国に来ている。


この国と日本がもっと盛んに交流出来たらとの願いで、色々な媒体が取り上げ始めている。
俺も記事を書いているタウン誌の依頼で、日本にあまり馴染みの無いこの国の観光スポットや名物料理、名産品等の取材に来た。

観光業に力を入れてるのは本当で、リゾートホテルにも日本の企業が参入していた。
ホテル内の設備も充実していてプールやアスレチック、ゴルフコースやテニスコートなどホテルの中にいるだけでもかなり遊べる。

海に囲まれたこの島は気候も合っているのか果物が抜群に美味い。
海産物は、日本にあまり馴染みのない魚や貝が捕れるらしく変わった魚介料理を食べる事が出来る。

そして、コーヒーの生産も力を入れている。
俺もそんなに詳しくないのでわからないが、珍しい豆もあるんじゃないかな?


いつもの俺なら、郷に入っては郷に従えの精神でその土地土地の風土料理を堪能してるし、記事になるものを探しながら楽しんでいる。
もっとその街に滞在していたいと思っている程だ。


だけど

今回は早く帰りたいとずっと思っている。


あ〜あ

ホームシックならぬコーヒーシックにかかっている。
いや、『Big Field』シックだ。
飲み慣れてないせいなのか、風土によるものなのか、こちらのコーヒーの味は独特で、あそこの店のコーヒーが飲みたくて仕方ないのだ。

次に行ったら何番のコーヒーを注文するんだっけ?



まつもとくんは元気かな?
もう1週間近く『Big Field』に行ってない。
あの彫刻みたいな顔でニコッと微笑まれたら、男だという事も忘れてドキッとしてしまう。
彼のあの笑顔が見たくて『Big Field』に通ってると言っても過言ではない。
こちらのコーヒーを飲んだらどんな感想言ってくれるかな?
もしかしたら俺は『Big Field』のコーヒーではなく、まつもとシックなのかもしれない。


でもそれも今日でおしまい。

明日には取材を終えて日本に帰る。

明後日にはまた『Big Field』でコーヒーが飲める。
まつもとくんに会えるんだ!

渡せるかどうかわからないけど、お土産にコーヒー豆を買った。