S


3日目   ブレンドC
コーヒー通は1度は飲んでみて、と書いてある通り、コーヒー豆の苦味旨味を凝縮した1杯だった。
きっとここのマスターの拘りのブレンドなんだと思う。美味い。

4日目   キリマンジャロ
コク、香り、酸味がマッチして飲みやすいコーヒーだった。


いずれの日も午後5時過ぎに来店し、彼に注文した。胸のネームには『まつもと』とあった。

「お待たせ致しました。キリマンジャロのLサイズです。」

「ありがとう」

そう言うと、ニッコリして「ごゆっくりどうぞ」と一礼して行った。
男性なのに、その笑顔にドキッとしたのは何だろう?

店に入った時も、あんたまた来たねって感じの親しさ?みたいのがあったし。番号札も昨日からくれなくなったし。さすがに毎日来てるから顔、覚えられたかな?
うん、ちょっと常連さんの域に入ったかもしれないと思う。たった4日だけど。



J


3日目  午後5時過ぎ

きっと今日もあのお客様が来る。そう確信みたいなものがあって、やっぱりいらしてくれた。そしてブレンドCのLサイズを頼まれた。
俺は意識すること無く、1日目、2日目と同じように接客した、と思う。


4日目

なんかさ、あのお客様、気になるんだよな(笑)

ちょっとさ、何か注文の法則みたいのがあるんじゃないかと思ってさ。メニューの上から順番に頼んでんじゃないかと思って。
だってブレンドAを頼むお客様がCも頼むってあんま無いでしょ?!.........、あるか(笑)  
まあ、オーダーはお客様の好き勝手なんだけど。

もし今日も来店されたら、メニュー4番のキリマン注文するんじゃないかと予想する。



そんなふうに気にしながら仕事する。
あのお客様がいらしてから5時が特別な時間になっている。近くなるにつれソワソワしていたらやっぱり今日もあのお客様が来店した。

「いらっしゃいませ」と通常よりニッコリ度をUPした。
さあ、何を頼む?来い!!

「キリマンジャロのLサイズで」

キタ━━( *´∀`)・ω・)゚∀゚);゚Д゚)・∀・)゚ー゚) ̄ー ̄)=゚ω゚)ノ━━ !!!

やっぱりそうじゃない?メニューの上から順番に頼んでるんじゃない?

「かしこまりました。こちらでお召し上がりですね?」

「はい、いつもの所にいますんで」

「はい、お席でお待ちください」


ダメだ、顔がニヤける(笑)

俺が注文の予想してるなんてあの人が知ったらどう思うかな?

毎日、同じ時間に来店して、コーヒーのLサイズを頼んでPCで仕事してる。
何の仕事してるのかな?
スーツを来てる訳ではないからサラリーマンって感じじゃないな。でも今はリモートワークって事もあるし。

俺がこんなに気にしてるんだ!少しは俺の事も特別な店員って思ってもらいたい。なんてね。

とびきりの笑顔で(言っても男の笑顔なんて要らないか)コーヒーを運び「ごゆっくりどうぞ」と一礼して戻った。

少しでも彼の印象に残って欲しいと思った。