「今日は社長と副社長が会合で、翔さん1人で店番なんだ。暇だといいんだけど」

「じゃあこんな日に潤ちゃん借りちゃって、優香、また専務の印象悪いじゃん」

なんて話しながら店のドアを開ける。



「ただいまー、あっ」

「こんにちはー、あっ」

僕達2人が目にしたものは.........、翔さんと女性のハグシーンだった。


抱き合ってる2人がこちらを見てハッとした顔をした。

「潤!」

「え?は、す、すみません、ごめんなさい、ごめんなさい。」と慌てて翔さんから離れた。





んー、察するに.........。

彼女、誰もいない事をいい事に、告っちゃったかな?


彼女の気持ちに何も気付いてなかった翔さんが「潤、違うんだ!違うんだ!」と慌てている。

「え?何?何?お店でラブシーンはヤバイでしょ!」と優香ちゃん。

「だから、違うんだってば!」

いたたまれない彼女は「すみません、帰ります。本当にごめんなさい。」と一礼して店を出ていった。

「ねえ、待って!」と優香ちゃんが彼女を追いかけて出ていった。

.................。


「潤!違うんだ!」と、慌てている翔さん。
困って焦ってる翔さんが可愛い。


「翔さん‼️」

「はい」

僕は翔さんの襟を正し、肩をポンポンと叩く。

「翔さんはあの人が今まで翔さんをそういう目で見てたって気付かなかったでしょ?」

「え?」

「僕もお母さんもあの人が来た初日に気付いてたんだよ。ほら、あの人が初めて来た日、お母さんに奥に呼ばれた事あったでしょ?」

「あ、あの浅漬けの一件か?」

「そう。お母さん、僕を心配してくれたんだ。まさかあの人がお店で告白するとまでは思わなかった。淡い想いなのかな、憧れなのかなって思ってたから。」

「全然気付かなかった.........。言ってくれたらよかったのに。」

「そうだろうなって思ってただけだったし、もし違ったら失礼だし.........。」

「びっくりしたよ、急に好きですってこられたから。」

「ふふっ。結構大胆だったんだね。あの人、僕達の関係を知ったらびっくりするだろうね。」

「だな。」

「彼女、もう気持ちを抑えられなくなっちゃったんだね」



本当はすぐに翔さんを抱きしめたかった。あの人の温もりを僕の温もりで消したかった。だけど、暇だとはいえここはお店。背中をポンポンして離れた。

「びっくりしたよね。でも大丈夫だから」

何が大丈夫なのかよく分からないけど、少なくとも僕は大丈夫だって伝えたかった。


「潤、強くなったな。あの瞬間、誤解して潤がいなくなるんじゃないかと焦った。」

「強くなった訳じゃないよ!翔さんの気持ちが分かってるから。僕が不安にならないようにいつも思ってくれてるのわかってるから。毎日、毎時間、毎分、毎秒、翔さんは僕に愛をくれるから不安になる隙すらないんだよ!

言ってて恥ずかしくなっちゃった。

「俺は潤がどんなに俺を好きか分かってても、他人と抱擁してる姿にやっぱり嫉妬するぞ。」


ふふっ。

僕の事でアワアワしてくれる翔さんも好きなんでね。

本当に今度、そんな場面見せちゃうよ?(笑)