成人式が終わり、仕事も少し落ち着いたこの頃
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ」
1人の女性が店に来た。
「あのー、和布でパッチワークしたくてー。端切れは置いてますか?」
「もちろんございますよ!こちらへどーぞ!色別に分けてありますので、ごゆっくり探して下さい。」とお母さんが接客する。
「ありがとうございます。わぁー、凄い!沢山!」
そう言って目をキラキラさせて布を見ている。
こちらの女性、多分初めて来店された方だと思う。
僕にとってその端切れは単なる布切れにしか見えないけど、パッチワークをする人達には宝の山なのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
奥から翔さんが店に出て、そのお客様に挨拶をした。
「こ、こんにちは」
途端にそのお客様は顔を赤らめてモジモジし出した。
ん?
何となく違和感を感じる。
側にいたお母さんも僕を見た。お母さんも同じ思い?
翔さんは全く気にもせずPCに向かって仕事を始めた。
僕はお母さんに愛想笑いを返し、翔さんの側で仕事を続けた。
「どんな作品を作るの?」
「作品だなんて大袈裟な物ではないんです。巾着袋や簡単なバッグとか.........。少し大きなタペストリーを作ったりです。」
「まあ、凄い!」
気を利かせてお母さんがあれこれ話をしていた。
「潤、今度の展覧会だけどさ」
「え?あ、うん」
「ライトアップする着物はさ.........」
翔さんと話しながら、ふとお客様を見ると、話してる翔さんをじっと見ていた。
「ゅん?潤?聞いてる?」
「え?あ、ごめん。もう1回言って!」
「うん、大丈夫か?具合でも悪い?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっとボーッとしちゃった。」
やっぱり.........。
この違和感
このお客様の本命は、布ではなく翔さんなんだと思う。
何故違和感?
そりゃ自分と同じ人を好きな人って何となく分かるよね.........。