翔くんの実家は俺の実家から車で10分とかからない場所にあった。

そりゃそうだよな。幼稚園が一緒だったんだから、家だって近いにきまってんじゃん。



タクシーが家の前に止まり、俺が先に降りると、玄関から翔くんのお母さんが出てきた。


「潤ちゃん!ちょっとー、大きくなって!久しぶりねー!おばさんの事、覚えてる?」と両手を握られてブンブン振っている。


「お久しぶりです。はい、ちゃんと覚えてました!」


「嬉しいわー。ちょっと、かなりのイケメンさんになっちゃってー」


「家の前で声がデカい!」


支払いを終えてタクシーから降りた翔くんが眉間に皺を寄せて言った。


「いいじゃない、ホントの事なんだから!さ、さ、入ってちょうだい!お父さんもお待ちよ!」


翔くんのお母さんは美人なのにサバサバしてて楽しい。


「ゴメンな、何かテンション高くて」


「歓迎してくれてて嬉しいよ」




リビングには居ると翔くんのお父さんがソファから立って迎えてくれた。


「お久しぶりです。松本です。ご無沙汰してます。」


「おー、潤くん!元気だったか?おじさんの事は.........覚えてないよなー。」


「そりゃ覚えてるわけないよ。運動会と生活発表会にしか顔見せ出てないもん。」


「すみません」


「いやいや、それが当たり前!」と言って笑った。



「私ね、あんまり料理得意じゃないの。」

とダイニングテーブルには豪華なケータリングが並んでいた。


「これ、飲んでください」


手土産に少し奮発して買った来た日本酒を渡す。


「おー、贅沢だな!嬉しいよ!皆で後で飲もう!」とおじさんが言ってくれて、まずはビールで乾杯した。



翔くんのご両親と、今の俺の仕事の話や実家の両親の話、北海道へ行ってからの事など色々話した。

ご両親も翔くんの小中学生の頃の話をしてくれて、密かに反抗期があった事も知れて嬉しかった。


「もらった日本酒を開けよう」とおじさんが言って、いい頃合いに冷えた日本酒で再び乾杯した。


「うわぁ、美味しい!日本酒苦手でもフルーティーで美味しく飲めるわ!」


「されど日本酒だから気をつけないと大変な事になるよ!」


「ん~、うんまい」


とお2人にも気に入って貰えて嬉しい。




お腹もいっぱいになり、リビングに席を移動する。


おじさんと翔くんは飲み足りないようでまだお土産の日本酒を飲んでいる。

おばさんと俺はコーヒーでケーキも頂いている。


「ねえ、潤ちゃん」


「はい」


「翔はこの歳になるまでずっと実家暮らしだったでしょ?一緒に暮らしてて大丈夫?何にも出来なくて潤ちゃんに迷惑かけてると思うのよ」


「大丈夫ですよ!色々やってくれます!ゴミ出しとか.........、ゴミ出しとか.........、ゴミ出しとか(笑)」


「おい!」


「おー、3回もゴミ出しするのか!偉いな!」


「おーい!」


と翔くんがツッコんで皆で笑った。


「本当に色々やってくれます!有難いし、楽しいです。」


「いや、正直、潤におんぶにだっこだよ。」


「そんな事ないよ!お掃除だってお洗濯だってやってくれるでしょ?!嬉しいよ!後ね、時々作ってくれるスクランブルエッグ、あれ、好きだよ!」


「スクランブルエッグって、聞こえはいいけどただぐちゃぐちゃにしただけの卵焼きだからな。」


「それでも美味しいよ!翔くんが作ってくれるだけで美味しいんだから。」




「う、うん!お父さん、このケーキ、すっごく甘いわよ!」


「おお!俺の酒も何だか砂糖が入ってるみたいに甘いな!」



ハッ!おじさんおばさんの前だって忘れてた!


「ハハハッ、潤、顔真っ赤!」


翔くんがそう言って3人で笑ってる。


は、恥ずかしい~(笑)



でも



凄く楽しい!