初めての旅行先は、俺が育った町を見てみたいとの翔くんの希望で北海道になった。

レンタカーでのドライブ旅行。

食べる事が大好きな翔くんに、新鮮な海の幸を堪能して欲しい。


漁港に車を走らせて市場に行った。

2人でブラブラと散歩がてら魚を見ていた。

「おー、まだ生きてるぞ」とか「これを肴に日本酒とか美味そう」とか目をキラキラさせて歩いてる翔くん。

誰もいなかったら腰にへばりついて歩きたいくらい(笑)

「今日のホテルの夕食は魚介を沢山使った料理にしてもらったから期待してて!」

「おー、楽しみ!ってか、腹減ったな」

「そうだね。ご飯食べよう!」

市場内のご飯屋さんに向かって歩いていたら、前から男の人が歩いてきた。

近づくとその人がびっくりした様に俺を見ている。

「潤?松本でしょ?」と声を掛けられた。

「透?わぁ、久しぶり!10年ぶり?」

「こんなとこで何してんの?」

こっちで同級生だった透だった。

「幼なじみと旅行だよ。俺の育った町を案内してんの。翔くんだよ。」

「櫻井です」と律儀に挨拶してくれた。

「やっぱイケメンの友達はイケメンだな」

「ふふっ、かっこいいでしょ?翔くん」

と言ったら「う、うん」と、戸惑いの表情が面白かった。
翔くんの方を見たら、呆れた苦笑いをしてたので耳元で「ホントの事だもん」と言ったら「全く.........」と笑われた。

だって俺の恋人は本当にかっこいいんだもん。



透は漁師で、透のお母さんと奥さんがご飯屋を営んでるというので、そこに行く事にした。


「いらっしゃいませ」

店のドアを開けると元気な女性の声。

「お二人様ですね、どーぞこちらへ」と席を案内してくれた。

あれ?

「もしかしたら、れいちゃん?」

え?っと言う感じで俺をまじまじ見た。

「えーっ、潤くん?」

「今、透と会ったんだよ!2人、結婚してたんだ?」

「そうなの。腐れ縁ってやつね(笑)
潤くんはどうしたの?こっちに来るなんて何かあった?」

「友達と旅行だよ!俺の育った町を案内してるの。」

「櫻井です。」とここでも翔くんは律儀に挨拶してくれた。

「あ、どうも、いらっしゃいませ。何?イケメンの友達はやっぱりイケメンな訳?」

夫婦2人して同じ事を言った。
思わず翔くんと顔を見合わせて笑った。

「何よー。
ね、そういえば、三丁目の八重、覚えてる?2コ下の。」

「んー、何となく」

「あれから潤くんを追って、東京の大学に進学したのよ。潤くんと同じ大学生のフリして会うんだーって嬉しそうに上京してったの。でも夏休みに帰ってきて話を聞いたら、潤くんが凄くかっこいい大人な学生になってて声掛けられなかったって落ち込んでた。隣に綺麗な女の人がいたって。」

女の人と一緒?
「あー、真由理だ。」と翔くんに言った。

「あー、そうなんだ。松本君はモテたでしょ?」

「そりゃあもう!小さい時からこんな顔で優しくて、潤くんを好きな子はたくさんいたんですよ!ただ、潤くんはどっか冷めた感じでそういうの興味なさそうだったから。だから、高校生になって潤くんに彼女が出来たってんで町中大騒ぎになったんですよー。」

「へぇー」

「もぉ、やめてよ、恥ずかしい。」

「いいじゃん、ホントの事だもん!何か潤くん、雰囲気変わったね?」

「えー?そりゃ30も過ぎた大人だからね」

「何かまあるくなったっていうか、冷めた感じがなくなった!」
なんて話してると厨房から呼ばれて、れいちゃんは奥に引っ込んだ。

「もぉー、余計な事ばっか言って。大袈裟なんだから」

「.........やっぱりモテたんだね?」

「全然知らなかった。そんな風に思った事もなかった。」

「高校の時の彼女ってのがめっちゃ気になるなー。」

「やめてよ、昔の話。どうしてもって言われてさ。周りも皆、彼女とかいたし。寂しかったんだよ、翔に会えなくて.........。」

翔くんかそんな俺の話を目を細め笑みを浮かべて聞いている。
改めて、翔くんに会えた事に感謝だ。

「やっぱり俺の恋人はモテるんだなー。」

「え?ヤキモチ妬いてくれてるの?」

「いや、モテる恋人を持ってるっていう自慢!」

「ふふふっ。」

なんて話をしてたら、特大の海鮮丼が出てきた。

「はい、どーぞ!再会を祝ってサービスです!」

「え?」

「お金なんて取ったら透に叱られちゃうよ。」

「ありがとう、頂きます。」
「ご馳走になります。」

美味い、美味いと口いっぱいに詰め込んで食べる翔くん。

そんな翔くんを隣で見れるだけで


幸せ