クローバー「Syoさん、ちょっと目を閉じてくれる? それから、深呼吸をして、リラックスして、なんとなく自分の中を感じてみて・・・。そして私が、ある言葉をあなたに投げかけるから、どんな感じになるか、ちょっと味わってみてくれる?」。その女性は、そう言いました。変なことを言う人だなあと思いましたが、悪い人じゃなさそうだったので、素直に従うことにしました。

 

クローバー目を閉じたまま待っていた私に向かって、その人は、「お、い、で・・・」と言ったのです。その瞬間、私は、体全体がザワザワ~として、泣きたいような、変な気持ちでいっぱいになりました。びっくりでした。「これって、いったいなんですか? なにかの魔法?」とたずねたら、その人は、「魔法じゃないですよ」と言って、ニコニコしていました。

 

クローバー講座が終わり、家に帰ってから、いろいろ考えてみました。私には年子の妹がいます。あと、妹が生まれてまもなく、父親がガンになりました。早期発見だったので一命は取り留めたのですが、「ガンは不治の病」と言われていた時代です。母は相当なショックを受けたことでしょう。そんな状況の中で私は、甘えることをガマンしてがんばっていたのかもしれません。そんな記憶はまったくありませんが。

 

クローバー自分には自覚はないけれど、実は、子どもの時代から引きずっている気持ちが、心の奥底に隠れている。そんな不思議な事実に初めて遭遇しました。そして、無意識に抱えこんだ抑圧感情のせいで、現在の自分の行動が、いつの間にか影響を受けている。そのことにも気づきました。

クローバー私はもともと、民間の会社に勤めていました。ところが、あるきっかけから心理カウンセラーの勉強を始め、やがて会社を辞めて、カウンセリングルームを開く決断をしたのです。もう、25年も前の話です。その時、私の指導をしてくれていた先生に、「Syoさん、心理カウンセラーとしてしっかりやっていきたいのなら、“自分を見つめる”ということもやっていくといいよ」と言われました。

 

クローバーその言葉を聞いて私は、「えっ? なんか私に問題があるっていうこと?」と思い、内心ムッとしました。子どもの頃から、「明朗、快活、いつも積極的」と通知票に書かれていました。会社員時代も、「Syoさんって、全然、怒ったりしないのね。穏やかな人ね」と、いつも言われていました。なので、“自分を見つめる”などという必要性は、まったく感じなかったのです。でも、まあ、先生のアドバイスだからと、しぶしぶ、“自分を見つめる”という講座に参加してみました。

 

クローバーある講師の方が、こう言いました。「私たちの心の中には、子ども時代に親に受けとめてもらえなかった気持ちがいまだに残っていて、そういった寂しさや悔しさが、ふだんの私たちの言動に影響を与えているものです。今から2人組になって、溜め込んでいる気持ちを相手に聞いてもらいましょう」・・・。これを聞いて、私は困りました。子ども時代を振り返っても、優しい両親、経済的にも安定した幸せな毎日・・・しか思い出せません。「いまだに引きずっている、親に受けとめてもらえなかった気持ち」なんて、見つからないのです。

 

クローバー私と2人組になった女性は、準スタッフのような立場の人でした。なのでその人に、「話題にできるような気持ちが見つからないんですけど」と、正直に打ち明けてみました。「そんなこと言わないで、ちゃんと探しなさい」と言われるかなあと、ちょっと心配でしたが・・・。でも、その女性は、ニコニコしながら、「ああそうですか。そうなんですね」と、私の言い分を理解してくれました。そして、「でも、せっかくだから、簡単なワークをやってみない?」という提案をしてくれたのです。

クローバー若い頃の私は、どうにかして「楽な自分」になりたくて、癒し系の本を手当たり次第に読んだり、あちこちの講座を渡り歩いたりしていました。そして、「そうか、そういうふうに考えを変えていけば、今までとは違う自分になれるのだ」と夢中になっていました。

 

クローバーたとえば、「どんな出来事も、とらえ方次第で、プラスに変えることができる」という話を聞くと、「なるほど、そこが自分に足りなかったところだ」と思って、幸せへのカギを一気に手に入れたような気分になりました。そして、プラス思考を意識するように心がけると、確かに毎日が少し楽になっていく感じです。でも2週間もたつと、意識し続けることに疲れてきました。そして、少し努力の手を緩めると、もともともっていたマイナス思考がわあっと出てきてしまったのです。そのリバウンドのひどいこと! 自分で自分にがっかりしました。

 

クローバー「“嫌な人がいる”ということは、自分の内にそれと同じ要素があるから、そう感じてしまうのだ。相手の嫌なところを許すようにしていくと、自分自身に対する肯定感も高まっていく。自分にOKが出せるようになると、どんな人と出会っても、嫌だと感じることがなくなるはずだ」という考え方を知ったときも、ものすごく納得できたので、すぐに取り組んでみました。でも、1週間で撃沈。「世の中の奴らは、みんな極悪人だ!」みたいなひどいリバウンドがやってきて、自己嫌悪の底に沈みました。

 

クローバーどんなステキな考え方に出会っても、結局は行き詰まってしまう自分。その方法で楽になった人がたくさんいるという話だから、私って、よっぽど最低なやつなんだ・・・。いろいろな考え方や方法に出会えば出会うほど、どんどん、自分に対する評価が下がっていきました。そして、人生が終わりかけそうになった直前・・・命拾いの大発見がありました。それは、「大事なのは、頭ではなく、感情だ」という気づきです。