
その家は、静かな佇まいの中、光を浴びていた。
僕たちは小一時間木々の間を当てもなく散策した。
意味があるかも知れない偶然の一致は果たしてどこへ向かっているのだろうか。それを探るような時間だった。
初夏の花たちに促されるように辿り着いた木造の家屋はひっそりと静まり返っている。
右手の窓のレースのカーテンが揺れ動いて人の気配がした。
ためらいながらドアベルに腕を伸ばした時、ドアが静かに開いた。
幾分、目映い光彩と懐かしい香りが僕たちを包んだ。
「おかえり・・・」
初老の物静かな女の人がこう言った。
板の間に置かれた渋い壺にさんざしが数本活けてある。
少し間をおいて、奥から女の子が小走りで出て来た。
「お母さん、お父さん、おかえりなさい」
「ただいま、お義母さん、里佳」
僕は、こう応えた。
「里佳、ただいま」
彼女はこんなふうに言った。
~つづく~


