じわじわ、じわじわ。


暑い暑い高校一年の夏。


日差しは相変わらず強く、この時期ならいろんな事ができるようで、この時期だからやる気を奪われる、そんな毎日。


学校の生活にも慣れて、クラスもだんだん落ち着いてきた頃。


みんないくつかの大きな"輪"を作り上げ、仲間意識を拡大させる頃。



小泉ハルという女は明らかに浮いていた。



女子とは、仲間意識を高め合い、自分たちの"輪"にいない子はただのクラスメイトであり、きっかけがあれば"輪"に取り入れたり分裂したりもする。



それがステータスであり、形であり、きっと楽なのだろう。



しかし、どういうわけか小泉ハルは違う。


無愛想なわけでも、嫌われているわけでもない。



むしろ誰とでも良く話し、ちょっとでも気が合えば相応以上に一緒になって楽しめる人間だ。



ただ、誰とでも良く話し、誰とでも等しく仲良くなる。

それだけなのだ。


そんな小泉ハルを、みんなはそのままの形で、付かず離れず、各々の友好関係で受け入れているようだ。




小泉ハルの容姿は、少し小柄で華奢、色白な体躯。

猫目で、大きな黒い瞳。

明るくまっすぐ伸びた髪。

化粧気がなくても十分な器量な顔立ちで、人目を引く容姿である小泉ハルに、一目惚れする人もいるほどだった。




ハルは頬杖をついたまま眠たそうに小さくあくびをして、チラリと時計に目を向けた。

「そろそろ来る頃かな」


そうハルがつぶやいた直後、教室のドアが勢い良く開けられた。


「小泉!!今日こそ俺はお前に勝つ!!」


ハルは、頬杖をついたまま声の主をチラリと見上げ、小さく微笑んだ。



「寝言は寝ていえって何回言わせれば気が済むんだよボケ竹原」



その容姿からはあまりそぐわない発言がハルの口からこぼれた。



竹原と呼ばれた男は竹原修二と言って、よくハルに突っかかってくるのだ。



ある所からは
「竹原くんまた来てるね」
と聞こえ、

ある所からは
「いくらやってもどーせ結果は同じなんじゃね?こりねーなぁ」
と聞こえ、

ある所からは
「今日はどんなやられかたするんだろ!」
と聞こえ、

ある所からは
「まぁーたうっせーのが来た。勝てるわけねーのに来んな来んな!」
と聞こえた。



それにカチンと来た竹原は、標的をハルから周りの野次馬へと向けて吠えた。


「ばかやろー!負けようとして来る奴がどこにいんだよ!だぁほどもがッ!」


周りの群衆はザッと一瞬怯んだ。