《あらすじ》
パリで、ひとりの青年が死んだ。最期をともに過ごした同居人は、ゲイの中年フランス人だった。青年の遺言は、「遺灰をサハラにまく」こと。フランス、スペイン、モロッコー。青年の姉、友人のカップル、同居人のグループは、様々な思いを抱えたまま、遺言を叶える旅に出るが…。
《私的にコメント》
視点がグルグル変っていきます。苦手な人は要注意ですが、この作品の場合、それほど気にならないかもしれません。変る時に、誰の視点かが書いてくれているので…。ただ、主人公を誰と捉えるのかが問題になります。(僕の書く物語も視点は変わる、主人公を隠しているというのはありますが、この作品は解りやすいです)
一人の青年が逝きました。想いを胸に秘めたままで、異国の地でソッと。
彼の遺言に従い、友人達は旅にでます。奇妙なたびの中で、出会いと関わりが色々な思いを変えていきます。一つの真っ直ぐだった思いが、受け取る側によって変化していく現実に対して、思い悩み苦しんでいく時間の中で、人の優しさと不器用さを見て取ることができます。
丁寧に紡がれていく物語の中で、人が持つ優しさにきっと触れることができるでしょう。
いま、あなたの傍にいる隣人が、特別な思考の持ち主として、あなたが出す答えはどう変るのでしょうか。人が人を好きになる。それを純粋に、無垢に、追い求めた先に有るものは…。