別れは突然に… 1 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

それは不意に訪れる。特に大したことでも何でもない出来事だ。珍しくもなんともない出来事。

ただ、それが自分に関係があるなどとは思わなかった。それだけだ。

それは一通の手紙から始まった悪夢だった。確かに書かれている内容に関して反論する余地はない。事実として認めている。だからといって、唐突すぎる裁判所からの呼び出しは有りなのか?と久保謙也は、裁判所からの封書を自室の机の上に投げた。

「ちっ!」

封筒に一瞥すると、謙也はベッドに飛び乗るようにして寝転んだ。

何がどう狂って、こんなことになったのだろう。

考えても出てくるのは答えではなく、ため息だけ。1週間前、突然会社から解雇を言われた。懲戒解雇、その理由については自分の胸に聞けということだった。ただ、そのおかげですぐに失業手当を受けることはできる。もっとも、受けるつもりはない。2週間後には新しい会社に行くのだから。そう思っていた矢先、勤める予定の会社から電話が掛かってきた。

不幸とは得てしてこういう感じなのかもしれない。

採用の取消。それも一方的だったが、騒いで損をするのは自分だと言われて、謙也は天井を眺めながら考えていた。何が起きているの、本当にわからない。

会社の解雇。いい風に取れなくもない。失業手当が受けれるように。確かに人事はそう言った。

次の会社も経営拡大の予定を先送りにすることになったので採用を先延ばしにしたいという言葉だけをとれば、就職先が無くなったわけではないといえる。

一つ一つを見れば最悪かもしれないが、合わせれば、会社の受け入れが整うまでの間は失業手当を貰うことができる。ということになる。
となれば、ハローワークで職業訓練を活用すれば、暇潰しがてら何らかの資格も取ることができるだろう。そう考えればこの程度のことは良い方に流れているといえた。ただ、問題があるのは家庭裁判所からの調停呼び出しだった。

考えたところで何も始まらない。いや、すでに何かが始まっていた。ただ、両方の会社が否応なくこれに絡んでいる気がした。

「ん?」

机から落ちかけている封書に気付き、謙也は手を伸ばした。

(振り込みか…)

それは毎月届く封筒。営業のついでにしている化粧品販売のマージンの報告だった。

(あれ…太いか)

ふとそんなに売り上げただろうかと考えたくなる。

売上は確認するために商品の販売状況と日時が克明にされているものが同封されている。副業とはいえ、本業がソーラーパネル関連の訪販である謙也にとっては、毎日が副業日だった。高くローンを組むことをメインにする本業よりも雑談の中で出す化粧品や健康食品の方がはるかにいい稼ぎになっていた。何よりも、ソーラーパネルは月に五枚売れれば、それで十分とされていた。

「………これ」

そこに入っていたのは売上だけではなく契約解除の案内。元々の契約は電話でする簡単なモノだった。知り合いに頼まれてというものの所為もあるが、実に事務的な手続きが行われた。だからこそ、問題の大きさが判った。

ベッドから降りて机の上を見た。そこには同じように副業にしている訪販の報告書が来ていた。

何かが動いている。自分の知らない処で。

「コイツの所為か」

謙也は裁判所からの封書を手に取った。ご丁寧に内容確認を求められた。だから、内容は知っている。何処からそれが発覚したのがが問題だった。