見慣れた部屋の天井を眺めて佳代はゆっくりと息を吐いた。
初めてベッドに自分以外の人がねている。シングルベッドの狭い空間で相手のぬくもりだけを感じながら、流れていった時間はあっという間だったような気がする。
暖かい。
それが何処かうれしかった。
独りじゃない、その感覚が心穏やかにしてくれていた。ここ数日、本当にハードだった気がする。
天城一真。よくわからないけれど、彼が好きだ。
そして、隣で眠っている法子もきっと。
「♪戸惑いと喜びの狭間で 君は微笑みながら いつになったら大人になるの?と聞いたね♪か」
佳代は、耳に残っている音を頼りに口ずさんでみた。
あの雑音の中でその音だけはしっかりと届いていた。
「あたしは、いつ大人になるんだろう」
「もう少し、かかるんじゃない?」
「法子」
「まだ時間がかかるし、子供でいたいな」
「やっぱり?」
佳代はクスッと笑った。
「ねぇ、佳代」
「ん?」
「佳代なら、『明日に持っていく 僕たちの希望』は何がいい?」
「解らないよ、そんな事いってくれる人いないし」
「うん」
「それに、いってくれても、戸惑うだけだと思うよ、法子は?」
「そんな事を言ってくれる人の傍に、ただいたいだけかな」
「ロマンチスト?」
「かもね」と、法子は楽しそうに微笑んだ。