空模様…こんなひとつのラヴソング 19 (新九朗のラプソディ 2) | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

毎度の事ながら落ち込んでしまう自分がいる。

はっきりといおう。一真は、音楽センスにかけている。と、思う。技術の一つ一つを比べれば、どれもこれも負けるものは無いだろう。それは自負とかではなく、客観的観測から来るものだ。だけど、ギャラリーを集めるのはいつでも一真の方だ。何が違うのか、それを探ってみたところで解らない。

人間の厚み。そんな莫迦げた理由に行き着く事もある。だけど生きてきた時間はそれほど変らないのに、厚みが変るわけも無い。日々の生活の中で差は出るだろうが、それは、もう少し年輪を重ねてからの事だろう。

悔しいが、理由は見つからない。

苦しみ抜いた末に生み出している詩一曲。それはそれなりの評価がある。

でも、新九朗にとっては、どう足掻いたところで「でも」だった。

伝えるメッセージを歌にのせている。

感動してくれる人も少なくないはずだ。

でも、何かが足りない。

その何かを知りたい。

見つからない、見つけられない答えを探して眠れない夜もあった。どうする事もできない夜。そのはけ口が終電後のライブだ。確かに、そこに人は集う。サークルの仲間の協力もあって、寂しい思いをする事は少ない。仲間のありがたさが身にしみたこともある。

できる事は、高が知れている。

ギターを弾き、詩を歌う。心の隅々に届けと。

それでも、何かが足りなくて、一真には追いつけない気がする。

♪解けないパズルは無いのさ

♪挑戦するものだけに見える真実

♪君の手をつかみたくて

♪君の声に包まれたくて

♪僕の心は迷宮(ラビリンス)に迷い込むよ

♪閉ざされていく道が

♪諦めろとさえずるよ

♪消えていく光の中で

♪僕の心だけがおぼれていく

♪闇の中に降り注ぐ光

♪添えられた微笑に

♪僕は手を伸ばすよ


佳代は、がむしゃらにギターをかき鳴らす新九朗を少し離れたベンチから眺めていた。

あのキスはなんだったんだろう。

新九朗を見ているとどきどきする。

一真を見ているときの感じとは何かが違う。

人を好きになる事の感覚は、誰にも言わないけれどわからない。

胸の高まりや、感情。という人もいるけれど、なんとなくそれだとは思えなかった。

ただ、その人の子とが気になる。

その程度の感覚も大切なのかもしれないと最近思うようになった。

いや、昨日の夜からだ。

パチパチパチと音が響いた。新九朗の演奏が終わり、ギャラリーが新九朗に声をかけている。

「よっ、起きたのか?」

「天城」

「ん?」

「さっきはごめん」

「涙か」

「うん」

「女の武器だね」

「えっ?」

「潤んだ目、強がりな眉間のしわ」

「そういう風に見るの?」

「理由はおいておいて、それをされると男は四面楚歌になるからな」

「もう(あれ…理由はきかないの?)」

「じゃあ、俺次の講義があるからさ」

「あっ、うん、そうだ、天城」

「ん?」

「法子を見なかった?」

「見たよ」

「何処に行ったか、知らないよね」

「ああ…迎いの整骨院にいるよ」

「えっ?」

「涼子さん…えっと、安藤先輩が行ってくれているはずだけど」

「ありがとう…」

「いいえ」

「あっ」

「なに?」

「何か言われた?」

「言われる予定だったらしいけどね、言われてないよ」

一真は、苦笑するとスッと背を向けた。

「そう…病院に行ってみる」

「おう」

一真は振り返りもせずに言うと手だけを振って去っていった。