空模様…こんなひとつのラヴソング 13 (佳代のラヴソング(うぶ恋)7) | 気紛れな心の声

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気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

佳代は霧屋を見送る結果になった。いや、正確には動く事ができなかっただけだ。

ファーストキス。だと思う。たぶん。いや、きっと。

幼い頃に、誰かとしたかもしれないが、たぶん、自分の記憶としては無い。

初恋は、確か、小学生の頃だった。隣の席に座っている男の子を好きになり、………それだけだった。

異性を意識した頃には、クラブ活動で手一杯になり、一応は付き合った事になる人はいたけれど、周りで語られるような甘い記憶はなかった。活動的で考えるよりも行動あるのみ、そんな性格の所為か、周りには女の子の方が多く恋愛を楽しめて記憶は無い。

どうすれば、なにをすれば、友人が語るような甘く切ないドラマに参加できるのだろう。そんな事を思ってすごしていたような気がする中学時代。

進学は、女子校にすすみ、異性との恋愛話は聞きかじりばかりになった。いわゆる耳年増。それでも、中学時代の友人から告白されて交際をしたのは確かだ。雰囲気?におされ、ドラマのような1シーンに参加しそうになった事もある。それは確かだった。でも、何故だろう。拒絶した。最初の2度くらいの拒絶は、愛嬌で済むかもしれないが、3度目になると相手は離れていくものだ。

「お前がわからない」と、そんな言葉を残していなくなる恋人?が何にもいた。

そのおかげかどうかは知らないが、さっきまでキスをした記憶は無い。

奪われたファーストキス。そんなに感動的なものではなかった。違和感も嫌悪感も無い。ただ、ただ、驚いている。

あの男は、好きな人なのだろうか。

あの人の歌が好きなのだろうか。

不思議が、不思議を作っていくようだ。

(そうだ、お礼言わなくちゃ)

佳代は、授業のノートを手に取りため息をついた。何かもやもやがある。それが何かわからないから、イラつく気がする。こういう気分のときは、何も考えずに行動したいものだ。

(あれ…)

佳代は、一真の書いてくれたノートをパラペラとめくって、クスッと笑みをこぼした。

所々に小気味のいい落書きがなされ、教科書からの引用や、講師の口語が記載されていてわかりやすい。それも、特徴的なノートの書き方に何気に感動したりもする。たぶん、自分の書くノートよりも丁寧に書かれている。テスト前には、一真にノートを借りるのもありかもしれない。

それにしても、不思議な男だ。

天城一真との出会いが、如月や涼子、霧屋に引き合わせてくれている。もちろん同じサークルだから、いつかは仲良くなるかもしれないが…。

(興味…危険…疑惑…避ける要素一杯だよね)

佳代は、荷物を片付け講義室を後にした。

行き交う学生の多さを眺めながら、これだけの人がいて、知り合うのは一握りだと当たり前のことにため息がつく。高校時代なら、少なくともクラスメートとは、言葉を交わすくらいに仲良くなるのに、大学では、全員とそうなることはありえない。

友達は、自ら作り出す努力をしなければいけない。と、誰かが言っていたけれど、大学に入ればまさにその通りだと痛感する。幸いにも、バイトやサークル、研究室といった参加していく場のおかげで大した労力も泣く友人はできるが、よくよく思い返せば、誰かがそれなりに動いた結果なのだが…。

「あっ…天城!」

「ん?」

「おはよ」

「おはよって…もう昼だよ」

「知ってるよ…いびきかいて寝ているのを前の席で聞いていたから」

「嘘?」

「どうだったかな?」

「どっち?」

「さぁ?忘れた」

「もう、じゃなくて、ノートありがと」

「ん?」

「違うの?」

「………」

一真は、足を止めて、佳代をジッと見た。

一呼吸の間。その時間が、とてつもなく長く感じられた。

「新九朗にノートは貸したけど」

「えっ?」

「無茶なパスだな」

「えっ?」

「新九朗は…お前に一目惚れかな?」

「そんなの私に聞かないでよ」

「だよな…」と、クスッと笑みをこぼしながら一真は言った。

確かに一真の書いたノートだった。でも、それは…。だと、したら、あのキスは…。

ブワッと涙がこぼれだした。

何がなんだかわからなかった。こんなところで、泣いていたら、きっと、一真が泣かした様に見えるだろう。

「ご、ごめんね」

「えっ?」

「ごめんね、天城」

「いや、謝られるほうが誤解が拡大するけど」

「あっ、それも、ごめん」

「ふーっ、まぁいいさ」

一真は、ポケットからクシャクシャの誇りぽいハンカチを取り出すと佳代の涙を拭き、抱き寄せた。そのまま、壁にもたれるようにして、天井を仰ぎ見た。当然ながら、周囲の視線は釘付けになる。

「また泣かしたのか?」

と、如月が一真の横で壁にもたれながら言う。

「また、ですか?」

「違うのか?」

「…またでしょうね」

「だろう?」

「俺の恋人でもないのに」

「まぁ、心音は、心落ち着かせる最高のリズムだからな」

「ですかね…俺にはわかりません」

「そうか?」

「ええ…俺の音楽センスは悲しくなるものですから」

「なるほどな」

「でも、恋に落ちる音とも言われているから、な」