これも恋物語… 第4幕 第2章21 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

水城は、ホテル脇にある歩道橋でタバコに火をつけた。久しぶりに銜えるタバコだった。別に吸うわけではない。ただ吹かすだけのタバコを。

水城は、仕事柄、タバコを吸わない。吸っていた時期もあるが、高校生の頃には止めた。

そんな水城がタバコを吹かす時は、誰かのレクイエムだった。

「終わったのか?」

天城は、面倒臭そうに話しかけてきた。

「ああ…無事というか…なんというかな」

「何かをして、失敗すれば、誰がソイツの尻を拭かなければならない…それは、俺たちでも、お前のところでも同じだろ?」

「ああ…」

「だが、後味が良くないか?」

「正直に言えばな…」

水城は、クスっと笑みを零し、「なぁ、誰の頼みか聞かなくて良かったのか?」と尋ねた。その視線は、定まらず、流れていく車のテールランプを眺めていた。

「聞かないほうがいい事もあるんだろう?」

「……まぁな」

「だったら、いいんじゃないか?」

「俺は、お前の悟りきったそういう部分が嫌いだ…」

「別に悟ってはいないさ…」

「あん?」

「お前を信じている…」

「?」

「だから、何も聞かずに協力をする…それだけだろ」

「らしいよな…サラリーマン」

「だろ?」

天城は、そう言って笑い返した。

「それはいいとして…何を苛立っている?」

「…親の思いの莫迦らしさ…かな」

水城は、苦笑した。手すりに手にしていたタバコを置き、ポケットから缶ビールを取り出して、天城に渡しながら。

「どうも…」

「それだけ?」

「ん?…誰かに対するとき、人は莫迦になるだろう?」

「そうか?」

「ああ…」

「例えば…?」

「恋人が拉致られたら?」

「取り戻すさ」

「即答だよな…」

「ん?」

「即答できない奴もいるさ…」

「………」

「全てが、一つの答えに繋がるわけじゃない…人が人を大切に思う形は一つじゃない、俺の立場とお前の立場では、出る答えも違うだろうしな…その上で、莫迦になる瞬間があるさ…」

「そういうものかな…」

「ああ…きっとな…」

天城は、そう言うと水城の横を通り抜け、歩道橋を渡り終えた。

きっと天城は依頼主が誰なのかを知っているのだろう。その上で手伝ってくれたと思える。下手に人情を語る奴よりも人情深い。自分の立場を危うくするかもしれない仕事に対して、何も言わずに協力してくれる。

それも一つの思いなのかもしれない。

笹尾の美津子に対する思いと、何も代わらないのかもしれない。

愛情も友情も人情も、全てが情における想いならば、そこに形の違いがあるだけで、その根底にある相手を大切にする思いは同じなのかもしれない。

「ありがとう…」

水城は、そういい残して、ホテルの方へと向かって歩き出した。            

(伝えない形の…愛情…か…)

何となく、そういう形の思いもいいと思いながら。