「な、なんだよ…」
「君がリーダーだよね…浅田俊平くん…」
「!」
「心配しなくても素性も名前も全て忘れるけど…君が、準構成員であることを知っているメンバーだけを教えてくれ…」
「えっ?」
「俺は、しのぎについて、どうこういう気は無い…ただ、ルールを守っていればな…君のところには、君のところのルールが存在するんだろう?そして、君のここにあるチームにも、な」
「…ああ、解っているなら放せよ…」
「凄んでも無駄だよ…」
「?」
「やくざ、ちんぴら、任侠…どれでもいいけどさ、独りの人間てさ、組織が怖くないもんなんだよ…稀に守るべきモノを持っているくせに、怖いもの知らず、もいるけどな」
「………」
「君のここのチームには、いないんだね?」
「…ああ…」
「一真、男たちを先に…」
「はいはい」
天城は、床で倒れている男を一人ずつ立たせると、威圧したままに部屋を後にした。
「あの、何処に連れて行ったんですか?」
「君は?」
「水木亮子といいます…」
「水木か…」
水城は、クスッと笑い、男の胸倉を掴む手の力を緩めた。
どすっ、と鈍い音をさせて、男は床に座り込んだ。本当は、立っているつもりだった。それなのに、立っていることができなかった。膝に力が入らない。体中の震えが止まらない。
「何がおかしいんですか?」
「俺もみずき…だからかな…心配しなくても、荷物搬入出エレベーターでホテル外に出してくれるから」
「じゃあ…その人は…」
「彼は上納金を払う為に美人局を本業にしている…でも、そっちだけでは、自分の実入りが少ないから、こっち側、つまり、君たちの方で小遣い稼ぎを始めたわけだ…ノウハウはあるしな…でも、その事が上層部にばれ、罠をはられた…」
「えっ」
「罠を仕掛けておいて、罠にはまるとは…という感じだけどさ…」
水城は、いいながら、亮子に近付いた。
「リーダーは?」
「私です…」
美津子が応えた。
「俺が何を言っても、君たちに変える気が無ければ何も変らない…」
「………」
「だから、何か言う気も無い…ただ、…」
ぱん!
「きゃっ」
短い悲鳴を残して美津子は床にこけた。
「お仕置き……本当は、親にしてもらうのがいいけど、俺が何処かに届け出るわけでもないから」
ぱん!
「きゃっ」
さつきが尻餅をつく。
ぱん!
「きゃっ」
みさえがソファーに倒れこんだ。
「忘れるな…」
「えっ?」
「自分がしたことが…後で何かの結果をもたらす事実になる事を」
「…あっ、はい」
ぱん!
亮子が尻餅をつく頃、明らかに雰囲気の違う集団が部屋に入ってきた。
浅田を迎えに来た組織のメンバーだった。
彼らは、水城に深々と頭を下げると何も言わずに浅田だけを連れて消えた。