これも恋物語… 第2幕 7 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

 第1章
 第1話

大槻賢治が、安藤みなぎと出会ったのは、中学3年の時、いまから3年程前になる。特に親しくしている相手でもなかったが、普通に接してくれるクラスメイトとして安藤はいた。たぶん、その日は、機嫌が悪かったのだろう。当たり障りの無い感じの男だった安藤が、いつもとは違う行動をした。普段、道を開けてくれるみなぎは、その日は避けずにぶつかった。

みなぎとの体躯の差から考えれば、賢治と対立するだけ無駄に思えるだろう。実際に、時々話す中で、みなぎは、賢治にそう言ってきた。喧嘩は、無駄な労力に感じられるとみなぎは言っていたし、実際にみなぎが殴り合いをする事を見た事も無かった。そのみなぎが、抵抗するかのように廊下でぶつかった。

賢治には、立場が有る。暴力という牙で従えてきた者に対する威厳なのだろうか。知人といえども引くことのできない現実的な状況がそこにあった。

「なんだ?」

「…どけよ…」

「(安藤…?)…お前こそどけ…」

「ここは、別にお前の私有地でもなんでもないだろう…」

「………」

賢治は、いきなりみなぎに殴りかかった。が、その拳は、空を切った。

次の瞬間、みなぎの拳は、賢治の顎を突き上げ、流れるように、膝が賢治の腹部を撃った。

「がっ!」

視界が目まぐるしく変わる中で賢治が最後に見たのはみなぎのスニーカーだった。学校で最も強いはずだった。番とか、そういうものには興味が無かったが、誰彼構わずに「さん」付けされ、敬語を使われるのは気分が良かった。

お山の大将。その言葉が良く似合っていた。

何がみなぎをそうさせたのかはわからない。ただ、みなぎは、黙って前に立ちはだかった。たぶん、周りの誰もがその理由をしなかっただろう。

力によって、暴君によって築かれた組織は一瞬にして消え去った。

「たくっ…」

みなぎは、賢治を担ぎ上げ保健室へと向かった。

みなぎは、知っていた。その日の放課後に何が起きるのかを。偶々、コーヒーを飲みに入った喫茶店。偶然に座った席の後ろで話されていた不穏な計画。それは、単純なものだった。対立するチームを潰す為に仕掛けられた罠は、下克上を含んでいた。対立チームもそれなりに有名なところらしい。この周辺の地区では、賢治と1,2を争う実力者と言われている相手らしい。その相手もろとも警察に飛ばす。その間に、勢力を自分達のものに変えるだけだった。実力者の影に隠れているとはいえ、喧嘩には自信が有る。相手のトップがいなければ、相手のチームなど取るに足らないという自負が有った。問題は、賢治が何時戻ってくるかと言う事だった。戻ってくるのは、遅ければ遅い方が良い。だから、その為の計画も練った。無論、相手側も巻き込む手筈で。

だが、その計画は崩れた。

肝心の賢治は、学校に釘付けにされた。賢治を連れて行くはずだった奴らが喧嘩の場所まで向かっているだろうが、たぶん散会するのは不可能だろう。

「ぐっ…」

賢治が目を覚ました時、窓の外は暗くなっていた。

「目が覚めたか?」

「どうして…」

「別に…なんかさ、お前が迷子に見えたんだ…」

「?」

「迷子を見つけたら、手を差し伸ばしてやりたい…だからさ」

「……迷子?俺が…」