ディズニーリゾートの結婚式フェアリーテールウエディングは、フルオプションが可能な場合、早朝のシンデレラ城前での写真撮影に始まり、挙式、披露宴、夕刻のかぼちゃの馬車での写真撮影となる。そのどれもが予約をすれば出来るというわけではない。1日に8組のカップルが取り合いをする。と、いっても早い者勝ちなのだが、それなりに料金も嵩んでいくし、花嫁は結構苦痛かもしれない。付き合う付き添いの方が大変かな・・・。
と、にもかくにも、魅力的なのはどちらかといえば、本人の希望しだいだろう。
光と紗智は、かぼちゃの馬車での撮影を知らなかったので、シンデレラ城での撮影になったのだが、パークは驚くまでに限界体制だ。入れるカメラマンは、限定されていて、シンデレラ城での撮影が出来るカメラマンは3人といわれている。当然ながら、それなりに審査をされているのだが…。
そのパスを持っていても、警備員は車を止め、荷物の検査をする。
パークの裏側の通用門から入り、決して見ることの出来ないパークお裏側を眺めながら、時折、ジョナサンのガイドを聞きながら、隠れたツアーに導かれて、シンデレラ城にたどりつく。
二人のためだけに、仕事の手は止められ、音も止まった。
スタッフはなれているのか、ジョナサンがカメラのセッティングをしている間、惜しみなく祝福の声をあげてくれる。が、闇の中から飛んでくる声は、建物に反射され、でどころが全くわからなくなる。
それでも光は、「さんきゅ~」と言葉を返しつづけ、手を振って、車に乗り込んだ。
撮影の場所は、シンデレラ城周辺というだけで実際は決まっていない。カメラマンとスタッフの交渉で決まっていく。光と紗智は、シンデレラ城の裏側、メリーゴーランドへと案内された。
メリーゴーランド。子供の喜ぶこのアトラクションも電気が消えていると少し怖い。
(ここで・・・撮影?)
光がそう思った刹那、ばん!という音共にメリーゴーランドは光につつまれた。音楽がかかり、近くにいたスタッフが、光に「こんぐらっちれーしょん」と声を掛けた。
「さんくす」
パークに入って、顔を見て返事をしたのは初めてだった。
「It be the day when today is good」
「?」
「良い日になるようにって…」
介添えのために来ているブライダルアライの宮城が、光に耳元で囁いた。
「あっ、さんくす」
「good luck!」
「さんきゅべりーまっち」
スタッフは、ウインクを残して、シンデレラ城のほうへと歩いていった。
メリーゴーランドでの撮影は光に包まれて終わった。瞬く間というのだろうか。いつの間にか終わり、ジョナサンは時計をちらりと見て、光に微笑んだ。
「Next」
「?」
光たちは、わからないままにシンデレラ城内部に案内された。