Runner 11 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

あれから数十時間。丸一日は過ぎ、車からバイクに乗り換え、車に乗って高速を走りぬけ、再びバイクで山越えをした。そんなに乗り物を変えなければならないほど危険なのだろうか。とも思いながら、裕樹の指示に従っている。

で、今度は、この命をかけたラインディングという事になる。

バイクは、フルバンクをしながら四車線の道路幅一杯一杯を蛇行しながら対抗する軍団に向かって突っ込んでいった。

「ひぃ…」

ギィッキィキッキッキッ。

悲鳴にも似たブレーキ音が響きながら夕凪の横をかすめて抜けていった。

(し、死んじゃう…)

まるでハエが巨大な恐竜に立ち向かうかのような気分だった。

誰とも接触せずに、裕樹の走らせるブラックバードは、恐竜の中を突き抜けていった。

(でも、何故だろう…相手は…どうして何もせずに通してくれるのだろう)

夕凪は、カラフルなライト光を眺めながら不意にそう思った。立ち止まって道を塞げばいいだけの事なのにすれ違っていく。まるで、脅かすだけの行動をとる理由があるのだろうか、と。

不意に辺りが闇に包まれた。

「何?」

「来るぞ…」

「えっ…」

ギッギュゥキッ。背後で明らかなブレーキ音が響いた。

「なぁ…?」

「何?」

「泳げたよな…?」

「それは…」

「水泳するから……」

「嘘でしょ…ホント…」

裕樹は、話しながらアクセルを開けた。

ギュィイイイイイイイイイイン。ブラックバードのエンジンが一層甲高い音を上げながら急加速を始める。

「えっ…」

「お前…『えっ』ばっかりだよな…」

「そ、そんなこといったって…」


○月13日未明。△▲道路にて、暴走車両による転落事故発生。男女二名の遺体を確認。と、地方紙の一角に記事がのった。つまり、そう言う事である。

裕樹は、新聞を読みながら苦笑した。暴走車両というのは、黒のGSXR。呼称ブラックバードと呼ばれるバイクだった。海に沿った連続するS字カーブ、そのもっとも大きな弧を描くカーブを曲がりきれずにバイクはガードレールに衝突。搭乗者は、海へと投げ出され、岸壁の岩に揉まれ海の藻屑となった。お粗末な最後だ。だが、それが最も簡単な処理の方法かもしれない。何よりも依頼者に頼まれた仕事は新聞が完了した事を知らせてくれる。世の中にある表と裏。それは、常に表裏一体であり、何処までも化かし合いが存在している。その事を知らない相手に対しては、平気で辻褄だけを合わせようとする。

問題があるとすれば、藤崎夕凪は、この世に存在していない、と言う事になっていると言う事だろう。本来は、本人が死んでいるので問題は無いのだろうが、偶然にも生き残っている。これをどう処理するかは、結局、特殊な機関の問題である。

「嘘でしょ…」

裕樹がその事故が何の事故を説明すると夕凪は、裕樹の胸倉を掴んで言った。今にも泣きそうな顔をしている。自分の押しやられた状況の悪さをようやく実感した、というところだった。

既に、夕凪の家の電話は不通になっている。当然、携帯電話も使えるわけが無い。

「どうして……」

「………」

「どうして、あたしなの……」