最後に会ったのって、何十年前だっけ?

…ふたりとも、最後まで思い出せなかったけれど。


久しぶりに揃った家族が、それぞれの場所へと帰っていった日曜日、

高校時代からの親友とランチをしてきました。


友人たちと旅行に来ていた彼女は、友と別れて一人残り、

旅の最後に、私に会うための時間を作ってくれたのでした。


待ち合わせ場所に行くと、

はるばる遠方から来た彼女は、

旅先でレンタルした、乗り心地の良い車椅子に座って待っていました。


難病を患っていて、常に機械で薬を投入し続けなければ倒れてしまう彼女と、

あちこちに古傷抱えて、膝も悪くしてる私と、


いやはや、年取っちゃったわねえ、と苦笑しつつ、


満身創痍の老女二人、

車椅子をシェアしながら、

数十年ぶりの、

楽しいお散歩。


ちょっと贅沢して、ホテルランチのバイキング。


ごちそうを堪能し尽くし、

賑やかな街をそぞろ歩いて、

あちこちの店を冷やかして回る間も、ずっとおしゃべりは止まらず。


景色に感動したり、

お土産を物色しまくったり、

設備だの品揃えだの商品だのに、あーだのこーだのとケチつけて、

互いの推しについて熱く語りあって、

写真を撮りまくり…


後から思い出せないような、

他愛なく、お気楽で、

軽く、浅く、楽しく、呑気な、

中身のない、しょうもないことばかりの会話は、

弾みまくって途切れることもなく。


何十年分の時間も、距離も、

一体どこに行ってしまったのかな。


体は、くたびれきった老女二人、

なのに、

中身は、まるで成長のない、

女子高生のまんま。


昔話なんて入る隙間もありません。


お互いに、

肝心なことは聞き忘れ、

用意していたお土産も、ことづかってたプレゼントも、

渡しそびれたり渡されそこなったまま、思い出すこともなく(笑)、


さんざん遊んで、

気がつくと6時間も経っていました。



ふたりとも、くたくたにくたびれきって。


すっかり日が落ちて暗くなった夕方、

彼女を駅まで送り届け、

一人、長距離ドライブで帰宅。


家に帰り着く頃には、

あんなに詰め込んで、満腹だったお腹もペコペコになっていて、

早朝から仕込んでおいた、

おでんとおにぎりで、ホッとひと息、晩ごはん。


ああ、

なんて楽しかった一日。


嫌なことなど一つもなくて、

体は疲れても気疲れなんて全くしなくて、


あの頃みたいに、
他愛ない会話と目的のない散策で、何時間も費やして、


口には出さないけど、

お互いに、

もしかしたら、リアルで顔を合わせられるのは、

これが最後になるのかも、なんて思いながら…


そして、次の約束なんかもしないで、
気安く、呑気に、お気楽に別れました。


何十年経っても、

私は私のままで、

彼女は彼女のままでした。

本当に、本当に、

心の底から、
楽しかった日曜日でした。