オウム真理教の活動に参加した私たちは、その活動で社会に与えた被害・悪影響を最大限償うことによって、社会に奉仕していきたいと考えています。
(1)一連のオウム事件への賠償の心構え
今現在、一連の事件の被害者遺族の方々への賠償を微力ながら行っておりますが、これは、私たちが、あのような事件を二度と起こさない証しとして位置づけております。
ご存じのように、ひかりの輪の会員は、国が賠償を肩代わりすることになったサリン事件を含めた重大事件に対しては、その事実を知らなかった者がほとんどです。さらには、その全ての会員は、事件に対する刑事責任や、賠償に対する法的な責任を負っていないという事実があります。
しかも、今現在は、すでにオウム真理教(アレフ)を脱会し、事件の原因となった麻原に対する信仰や教えは全く使わずに、上祐代表らが中心となって説く新しい考え方によって、思想的にも経済的にも完全に独立して、団体は運営されています。
その中で、団体として、どのように賠償を位置づけているかという点をご説明しますと、特に、オウム真理教からひかりの輪に移ってきた者に対して、
1 自分たちが、事件の犯行者達と同じ教祖・教団の信仰を共有していたこと、
2 重大事件の犯行者の中には、最高幹部に限らず、中堅幹部から一般出家者もいること、
3 特に、あの時に仮に自分が教祖に犯罪の指示を受けていたならば、自分が犯罪に及んでいたのではないか(宗教的な理由からも、身の保全からも、及ばざるを得ない状況だったのではないか)ということ、
などをよく考えるように促しています。すると、自分たちは実行犯ではないが、実行犯は自分達と完全に区別できる存在ではなく、多くのオウム信者の代表として犯行をなした一側面があることがわかり、それに基づいて、自分のこととして賠償に尽くすようにと指導しています。
これは、ある意味、間違った体制の中で、間違った戦争を行なった国の中で、徴兵された兵士のようなものかもしれません。私たちは、自分たちが実際の犯行者ではなかった中で、こういった心構えを持って今後の賠償を行うことで、将来において、あのような犯行に及ぶことは決してないことの証しにしたいと考えています。
(2)生命・健康の損失に対する償いについて
しかし、当然のことながら、賠償金のお支払いでは、一度失われた尊い生命を取り戻したり、後遺症の完治をもたらしたりすることはできず、単に、遺族や被害者の方々の経済的な損失被害を弁償するにすぎません。
よって、生命の損失、健康の喪失に対する償いというものを考えますと、現在、被害者の方の検診・治療に当たっている組織への寄付を行わせていただくことや、将来のテロを含めた犯罪の抑止のために尽くさせていただくことを考えています。
そのためには、オウム真理教に限らず、様々な宗教勢力によって世界中でテロが頻発する現代において、いかにすれば、将来において宗教によるテロ・犯罪が行われることを緩和・抑止・防止することができるかという点を考えて、できる限りの奉仕をさせていただきたいと思います。
①テロを起こさない新しい思想を提示すること
その活動の一つとして、まず、公式HPなどを通じて、
1)オウム真理教の実態・問題点・教訓を分析した結果や、
2)団体内部で検討した一元の思想や、テロを起こさない思想、
について、公表していくことがあります。
実際に、世界には数多くの思想・宗教がありますが、歴史を見ても明らかなように、少なからぬ思想・宗教は、自分たちが最善で他は悪であるという二元的な思想傾向を持つことから、自己を絶対視し、人と人との対立・闘争を生み出してしまう傾向があります。
オウム真理教のテロがなくなった後も、世界では、例えば、イスラムと欧米の間でのテロをはじめとして、宗教や文化の違いを根本的な原因とした宗教的テロリズムが大きな問題になっています。
その中で、私たちは「償い」をさせていただくという気持ちをもって、21世紀のための思想として、例えば以下のことを提唱しています。
1)自分や他人を含む人間を絶対視しない。自分は常に不完全で未完成の求道
者であるという謙虚な気持ちを忘れない、その結果として、自分と他人、
善と悪、聖と邪を単純に二分して区別する二元的な思想・宗教の傾向から
超越していくこと。
2)全ての人物や生き物、自然の中に、神や仏の性質を見つけて尊重すること
や、全てがつながっており支え合っていること、人類社会・世界を皆で協
力し合いながら良くしていくことといった、一元的な世界観を育むこと。
②テロ防止機関・専門家に対する協力をすること
さらに、国内外のテロ防止機関、研究家、専門家に対する情報提供を含めた協力を行いたいと考えています。その中で、公安調査庁には当団体から情報提供を行っており、海外の専門家に対しても、すでに繰り返し協力を行っています。
海外の専門家に対する協力の中では、アメリカのテロ研究家と複数回すでに面会し、今問題となっている国際テロリズムの防止のために、過去のオウム真理教のヴァジラヤーナ活動における生物兵器・化学兵器の製造実験などの実態を明らかにした協力も含まれており、今後もこれを継続する予定です。
また、世界には、アメリカに限らず、テロを防止するための研究や活動を行っている機関や研究家が多数存在していますから、今後とも、こうした機関等に対して情報を積極的に提供し、テロ防止のために役立たせていただきたいと考えています。
③国際テロリズムの温床を緩和するための貢献
また、今後の団体活動の中で、現在の国際的なテロリズムの温床となっている途上国における貧困・適切な教育機会の不足などに対して、(一連のオウム事件の賠償支払いの負担があるために、それに抵触しない形で)適切な支援を行っていくための具体的な仕組み作りに着手しています。
テロの原因としては、テロリストとされる人の精神病理的な人格の問題が第一に来るとは思いますが、先天的な要素もある人格の問題は、現実として解決しにくい面があるとも思われ、第2の要因として、その人を取り巻く生活環境を改善することが、先天的に人格上の問題をテロに結びつけない対策ではないかと思います。
麻原の場合も、弱視という身体障害を負う中、自分が望まない親元を離れた盲学校(障害者学校)に入学させられる中で、親との交流が乏しくなり、親を憎むようなった経緯が見られます。こういった幼少期・青年期の挫折・苦しみが、人格を歪め、教祖となった後にも、彼の被害妄想と、その対極の誇大妄想の一因となったとも思われます。
一方、現在問題となっているイスラム原理主義のテロリズムについても、その根底には、現在の国際社会の中での途上国社会の苦しみ、貧困や教育機会の欠如があり、その中で、原理主義の神学校による過激な宗教教育が若いテロリストを育てているという現状が報告されています。
こうして、テロは人が行うものであり、その中でも幼少期の問題は大きいと考え、微力ながら、できうる限りの支援を検討しております。