テーマ:『感情のラベリング』について
『感情のラベリング』 とは:心理学用語。
今の自分自身が感じていることを言語化して表現すること 。
ストレス緩和やストレスへの耐性を高めたりする効果 があるとされる。
<感情のラベリングの有名な実験> カルフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者チームが実施。
方法:「クモ恐怖症」を抱える被験者を対象に、恐怖症克服のために「疑似体験治療法」を実施。
内容:疑似体験治療法とは不安対象(クモ)へ徐々に被験者を慣れさせる方法。被験者にガラス容器越しにクモを見てもらうことから始め、徐々にクモと被験者との距離を縮め、クモに対する恐怖心を克服させていく。
被験者のグループを以下の3つに分け、感情のラベリングに効果があるのか観測。
グループ1:楽観的思考(クモが無害であることを伝えられたグループ)
グループ2:経験の回避(クモへの関心をそらすための質問をされたグループ)
グループ3:感情のラベリング(今感じている気持ちを言語化したグループ)
グループ3の被験者らは、「クモの身体の毛が気味悪い」「噛みつかれたりするのでは
ないかと怖い」などと、不安に感じたことを具体的に言語化。
疑似体験治療に感情のラベリングを追加。
結果:グループ3は不安が鎮まってストレスが軽減する効果があった。
一方、グループ1と2は不安感が悪化。
不安対象を認識して自身が感じている感情を素直に言語化する方が、不安対象を無理に避ける
よりも、ストレス軽減の効果があることが明らかになった。
<簡単にできる感情のラベリングの3ステップ>
【ステップ1】あらかじめ選択肢を用意しておく
信州大学の『信州心理臨床紀要』の論文によれば、自身で思いついた言葉でなく選択肢をもとにして感情のラベリングをしても、ストレス軽減の効果があることがわかっています。
感情を自分で一から言葉にしなくても、感情を選ぶだけでストレス軽減の効果があることが分かった。
「自分の気持ちの変化を言葉にするのは難しい」と感じている人は、感情のラベリングに関する実験を参考にして、「怖い」「ムカつく」「ダルい」などの感情に対して、あらかじめいくつかの単語を用意しておきましょう。
【ステップ2】怒りを感じたら「6秒」待つ
負の感情の中でも特に「怒り」を感じた時には、カッとなり冷静さを失いやすいため、感情のラベリングは一層難しくなります。
怒りをコントロールするメソッドとして知られる「アンガーマネジメント」によれば、人間の脳は、大脳辺縁系で生まれた感情に大脳新皮質の前頭葉が司る理性が介入することで、感情をコントロールして理性的な行動を促す仕組みになっている。
そして、感情が生まれてから理性が介入するまでの時間は「6秒」。理性が介入するまでの6秒を待つことができれば、怒りに任せて爆発することなく、理性的に行動することができると言います。
理性が働くまでの6秒間にすべきことは、頭の中に温度計を浮かべること。イラっとした怒りの度合いに温度をつけると、「今のは80度くらいで熱いけど、沸騰するほどではないな」といった具合に気持ちを落ち着けることができます。
怒りの感情以外にも対応できるように、温度計と同じような要領で、感情が生まれた瞬間に脳内で感情メーターのようなものを思い浮かべてみるのも有効。
【ステップ3】自分自身でも感情の言語化に挑戦
ステップ1で紹介した選択肢を用意するのが面倒な人や、自分で感情を言語化できそうな人、語彙力に自信のある人は、自分自身で感情を言語化することに挑戦してみる。
調査によれば、自分の感情を豊かな語彙を使って表現できる人は、自分の感情を明確に捉えられない人に比べ、言葉の暴力や腕力を振るうことが40%少ないとのこと。
表現豊かに自身の気持ちを言語化できる人ほど、感情的にならずにストレスを回避することができる。
感情のラベリングは、その場での感情の抑制だけではなくて、今後同じような状況になったときも衝動的な行動を起こさないための、ストレス体制の強化にもなります。
感情に振り回されずに、冷静に自分の感情を見つめる習慣を身に付けていきましょう。
参考文献:studyhacker.net/kanjo-labeling