俺が君を愛しても

君が俺を愛しても


俺達は決して結ばれない


「愛する君の手で俺の息を止めてくれ」


俺の言葉に君は笑顔で頷いた


『愛しい貴方の手で私の息を止めて』


求めていた君の言葉を聞き、強く抱き締める



ああ、俺達は同じ思いだったんだ…



それなら互いの息を止めよう





そう誓ったのに、君は俺の息を止めてくれなかった


眠るように瞳を閉じた君の頬に雨が滴る

君を抱き上げ、湖へ足を進めた



暗い底へ落ちていく俺の頬を暖かい手が包んだ


ああ…俺も君の息を止めることが出来なかったんだな


俺達は離れないよう強く抱き締め、どこまでも深い底へ沈んだ。





きっと次は…………………


…次?


俺は……俺達は……















翌日、湖から溢れた水は一つの町を襲った。

それは三日三晩続き、逃げ惑う人々を全て飲み込んで漸く止まった。


多くの遺体が回収された。だが、唯一遺体が見つからなかった二名の男女は行方不明とされた。