みなさん、こんばんは^^



長くご無沙汰してしまいました。
お元気に過ごされていましたか?



前回記事をあげてから、
あっという間に12月が終わり、
昨日でお正月も終わってしまいました。



私が冬眠してしまっていた間も、
あたたかい言葉をかけてくださり、
お気遣いくださったみなさま方、
本当にありがとうございました。



おかげさまでようやくここに
戻ってくることが出来ました。



メッセージのお返事も遅れがちで、
みなさんのブログにもご無沙汰してしまい
本当にごめんなさい。



私は元気にしておりますと
少しずつみなさんにお返し出来たらと
思っています。



それまで今しばらくの間、
無精をしてしまいますが、
どうかお許しください。





さて、
一昨日、昨日、そして今日と
冬らしくようやくここでも
雪が降るようになりました。



そして昨日今日は、
今シーズンで一番、二番の
冷え込みだったような気がします。



ここは今も2㎝くらいでしょうか、
雪が積もっています。



そのせいか車の音はほとんど聞こえなくて
響いているのは、
自分の指がキーを叩く音だけです。



明日の朝も雪で通勤が大変そう。
早めに家を出なくては。



みなさんがお住まいの地域は
いかがでしょうか?
外に出られる際は
どうか気をつけてくださいね。



話は変わりまして。
私の近況報告を。



2017年。
新しい年が開けて
まず最初に私がしたことと言えば。



新年になったと同時に、
ビギストの更新手続きをしました。



期限は2月までなんですが、
今年は私達が待ちに待った年です。



日付が変わる瞬間に更新しようと
ずっとずっとウズウズしていました。



とはいうものの、
今年の秋に娘の大学受験を控えておりまして、



私自身のリアルトン活再開は、
来年までお預けになると思いますが、



みなさんのブログにお邪魔しながら
ホミ欠を補いたいと思っていますので
どうぞよろしくお願いします^^



今年はそんなこんなで、
よい年になりますようにと
珍しく初詣に行ってきました。



人ごみは嫌だし、
かといってあまり遠くに行くのも
気が進まなくて、初詣に選んだのは
仙台市にある青葉神社。






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青葉神社は仙台藩祖・伊達政宗を
祭神としており、
山の上にある眺めの良い神社です。



今の宮司は、
仙台藩家老だった片倉家の御当主が
務められていることもあり、
(片倉小十郎のご子孫ですね)
その方にお会いしたい歴女が
青葉神社に殺到しているそうです。



初めて行った青葉神社は、
元旦ということもあり、
思っていたより人が多く、



山の斜面を這うように作られた参道の石段に
1時間ほど並んでから参拝しなくては
なりませんでした。



それでもその日はとても暖かい一日で
参道に並びながら仙台市内を見渡し、
豊かな自然の中、
森林浴を満喫することが出来ました。



お参りしてから娘が絵馬を奉納し、
鳥居近くのコンビニで
家族そろって熱々の玉こんにゃくを食べて、
無事初詣を済ませることが出来ました。



そして翌2日。
中学校の同窓会に出席するため、
たくさんの人出で知られる神社に行きました。



こちらはというと、
人、人、人のとんでもない混雑ぶりで、
受付を探すのに一苦労し、
人ごみをかきわけかきわけ、
本殿に向かいました。



成人式以来の出席だったので、
すっかり顔と名前が分からなくなってしまって。
(男性は特に。おっさん化が激しく)
話しかけようにも名前が思い出せず…。



以前の私なら同窓会なんて面倒くさい、
そんなふうに思っていたんです。



でも震災でたくさんの別れを経験して
会えるうちにみんなに会いたいと思って
出席を決めました。



同窓生も多くの方が鬼籍に入り、
震災を期に消息が分からなくなった方や、
体調を崩して欠席された方がたくさんいて、



いつまでも変わらないなんて保証は
どこにもないと実感しました。



参拝した後、宴会となったのですが、
親しかった友人はほとんど欠席、
唯一出席していた友人とはくじ引きで
席が離れてしまい、
どうしたものかと途方に暮れていたら…



隣りの席に救世主が!!!



私が実家にいた時、
近所に住んでいたA君がなんと隣りの席に。



実は彼とは数年前、
私の会社で偶然に再会したんです。
彼は取引先の課長として来ていたんですが
彼に会っても私は全然気がつかず…。



何度も来ているのに
全然私が彼に気づかないので
声をかけてくれたそうです。


彼のほうから名乗り出られて、
ようやく分かって再会を喜んだのでした。
(私は喜んだけど、彼は??)



というわけで、
なんとか会話を成立出来る彼が
私の隣りの席になって、



ぼっちで途方に暮れていた私は
最後まで安心して同窓会に
いることが出来たのでした。



彼とは幼稚園、小学校、中学校まで
一緒だったのですが、



活発な彼とは対照的に大人しい?私は
すっかり接点がなくなってしまい、
会社で再会するまでほとんど口をきいた
ことがなかったのです。



「隣りで良かったってあなたは言うけどさ、
俺達ほとんど口きいたことなかったじゃん。
最後に俺と口きいたのいつだか覚えてる?」



最後に口きいた時と言われ、
はた、と考えてみて
幼稚園の頃だったような…と答えたら、



「そうだね、幼稚園くらいだね。
俺とあなたとは住んでる世界が
違うんだって子供心に思ったよ。
あの頃からあなたはいつも一人だった」



そう返されて、
急に子供の頃に戻った気がしました。



小さかった頃、
うちの周りは大きな農家ばかりで
農繁期になると家族総出で田畑に行ってしまい、
もともと農家じゃなかった私は、
遊んでくれる友達が一人もいませんでした。



田植え、稲刈りの時期は
近所の友達が誰もいなくていつも寂しくて
家の中で一人遊びをしていたものでした。



そのことを彼は今もよく覚えていて
彼に言われて、そういえばそうだったと
思い出したりして。



「みんなともっと遊びたかった」



そう私が言うと、



「もっと違う育てられ方したかったとか、
自分の家も農家だったら良かったと思う?」



彼はそう言ってから、



「それは違うと思う。
あの頃みんなとは違う環境で、
あなたは寂しかったかもしれない。
でも、それが悪かったとは俺には思えない。
あの頃のあなたがあるから、
今こうして俺と口きいてくれるんじゃないの」



「うーーーん、そうかなあ。
そういうものかなあ…」



寂しそうな子供に見えたのか、私って。



彼が私に会社で声をかけなかったら、
私は彼に気がつかなかっただろうし、
こんなふうに同窓会で話すこともなかった、
そんなふうに言われてそうか、
と思ったり。



小さい頃、そんなふうに私を見ていたなんて
思ってもみなかったし、まして知ることも。



小学校、中学校になってから
どうして自分と口をきいてくれなかったのかと
問いかけられて、年をとったせいか、
すらすら答えられる自分に内心驚きました。



「あなたは運動神経が抜群で目立ってて、
でも私は大人しくて目立たないほうだったし。
中学になったらあなたは不良になって
凄みが出て近寄り難くなって、
いつも彼女連れで、
見るからに怖そうだったというか」



「あんなの全然不良のうちに入らない。
あなたの基準で見たらほとんどが
不良ってことになっちゃうでしょ」



いやいやいや。
モテモテの不良でしたよ、あなたは。
怖い彼女がいつもべったり張り付いて、
がっちり他の女からあなたをガードしてた
じゃないですか。
よーく覚えてますよ。



そうか、
だから話しをしたことがなかったんだ。



そう思い当たったと同時に、
会場内に当時の怖い彼女がいるのを思い出し、
やがて私達が話していた所に、
当時彼を好きだった近所の子がやってきて。



がんがん彼に話しかけだしたのを見て、
急激に中学校にタイムスリップをしたような
そんな錯覚を覚えた私だったのでした。



不良?が誤解だったかどうかは別として、
ぼっち寸前だった私にとって
彼はまさに救世主に見え、



なかなか周りに馴染めなかった私に
確か幼稚園の頃の彼もこんなふうに優しかったと
ぼんやりと思い出したのでした。



年をとるということは、
いずれ、という言葉が叶わなくなる、
そんなふうにしみじみ感じた同窓会でも
ありました。








さて、久しぶりに妄想小説です。
今日は「ある休日」という読み切りです。



「青い空を見上げて」とは
全然関係がありません。



最近リアルの二人を追えていないので
噛み合ない部分があるかもしれないですが
これは全て妄想ですので、
読み流していただけたらと思います。



これは、BL小説です。
BLがピンと来ない方にとって、
不快に感じる表現がありますので、
ここでページを変えてくださいね。



次はもっと早くみなさんに
お会い出来るように、
身体を治したいと思います^^
















ある休日










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夜空を見上げた。



高層ビルに囲まれたソウルの空は
決して高くも広くもない。



それでも、明るすぎるこの空を
きっと今頃あの人も
同じように見上げているだろう。





寒いこの時期特有の
澄んでいて刺すような独特な空気。



薄汚れたような色のビルの壁にもたれた
青年は暇を持て余していた。
キャメルのコートのフードを深くかぶり、
白いマフラーを鼻の上まで巻き付けている。



さらに人目を避けるように
うつむいているその表情は
外からはほとんどうかがうことが
出来ない。



青年は白い息を吐きながら、
ズボンのポケットからスマホを取り出し、
見慣れた画面のアイコンの中から
フォルダーを選択して写真を探した。



今の仕事仲間の笑顔、
事務所のスタッフの笑顔、
家族の笑顔、
事務所の後輩が撮ってくれた、
ふざけた自分の笑顔、



そしてそれから…



いくらスクロールしても
一番見たい人の姿は
集団写真の中にいるばかりで
味気ないものばかりだった。



「そうか…そうだった」



数少ない理由に思い当たって、
一人苦笑した。



長い時間ずっと一緒に過ごした
その人の写真は、
以前はフォルダーに一番多く
収まっていた。



おどけた顔。
振り返った時の驚いた顔。
コーヒーを飲んだ時の満足げな顔。
伏せた睫毛が長く美しい寝顔。
自分を見つめている優しい笑顔。



自分だけにしか向けられない笑顔。
二人きりの時にしか
聞くことが出来ない声音。



ある時を境に自分で消したのだ。



一人で見た時思い出して、
寂しくならないように。
泣き出してしまわないように。



誰もが知っているその人が、
今、どこにいて、
何をしていて、誰といるか。



リアルタイムに知ろうとすれば、
いつでも彼は知ることが出来る。



でも、あえて彼は
それをしなかった。
見てしまえば寂しくなるし、
恋しくなる。



自分が知らないその人の姿を見て、
動揺しない自信がなかった。



自分だけが知っている優しい瞳。
記憶の中だけに残して、
大事に大事にしまっていれば、
いずれその日は訪れる。



声を殺して静かに長くため息をつく。



ふわりと白く煙った視界に
どこかの店から流れてくるBGM。
もう何回同じこのフレーズを
繰り返し聞いていることだろう。



あまりにも早く着きすぎて、
それでも何をして時間を潰せばいいか
戸惑ってしまうほど思いつかなくて。



大通りから一本入った小さなこの通りは
人通りさえまばらで
他の音は何も聞こえてはこない。



寄り掛かった壁のタイルの溝を
冷え切った指先で手持ち無沙汰に
一つひとつ何度もなぞりながら、



誰にも聞こえないように
声を抑えて一人でつづるハミングは
やはり、とても寂しかった。



「…あ、」



溝を再びなぞり始めたところで
聞き慣れた足音が
遠くに聞こえたような気がして
彼は思わず顔を上げた。



吐き出される息継ぎの声。
表通りのアスファルトを叩いて
駆けて来る足音。



このリズムは多分…きっと。



息を弾ませながら
その足音が彼の間近で止まる。



「チャンミナ、遅れてごめん。
かなり待たせちゃったね」



黒いニット帽を目深にかぶり、
夜だというのにサングラスで目元を隠し、
両手に重そうな荷物を下げて、



黒いダウンジャケットを着込んだ
彼の待ち人が
目の前にすっきりと立っていた。



「いえ、全然…
ヒョン、おかえりなさい」



ただいま、と微笑みながら
ユノがチャンミンの額を軽く小突くと
吐いた息がふわりと白く煙り、
丸いラインを描いてゆっくりと消えた。



久しぶりに感じたその呼吸の気配と
触れられた額のその部分が
急に熱く火照り出し、
チャンミンは不覚にも戸惑い、
頬が急に赤らんでいくのを感じた。



あまりにも長い時間待ち続けて
身体の芯まで冷えてしまったから
この冷たい指先のように
心までいつもの温度を忘れたのだろうか。



一方でユノのほうは、
以前と全く変わらない朗らかさだった。



自分の隣りを以前と同じように距離を
とって歩きだしたその人の気配に、



ようやくチャンミンは、
止まっていた自分の時計の秒針が
急に動き始めたような気がした。



チャンミンは照れを隠すように、
ユノが両手に下げていた荷物の一つを
ひったくるように取り返して
先回りするように歩き出す。



子供じみたその仕草を見たユノは
小さな笑いをこぼした。



「わざわざ駅まで迎えに来なくても
良かったのに。
誰かに見られでもしたら面倒だろう?」



「ええ、面倒ですね。
だから駅までは行くのはやめたんです」



顔を見ようともせずに
素っ気なく答えたチャンミンを見て
ユノは内心、相変わらずだと
安堵のため息をつく。



「だからってこんな寂しい通りで
待ち合わせしなくても良かったのに。
例えばどこかのカフェとか。
暖かいし、コーヒーだって飲める」



「カフェにしたって、
誰かしらいるじゃないですか。
見られてサジン上げられたら面倒です。
誰にも見られなければそれでいいんです。
だから気にしないでください」



今回二人の休暇を合わせたことは
誰にも教えていない。
事務所にも、家族にさえも。
いずれはバレるにしても、
今はまだ二人だけの秘密の休暇だ。



それを分かってはいるものの、
ユノはわざとらしく口を尖らせた。



「オレとのことになると
やたらと神経質になるんだよな。
他のヤツとなら平気で上げさせるくせに」



最近目にしたチャンミンのサジンを
脳裏に浮かべながら、
そんな皮肉が口を突いて出る。



「何ですか?
帰って来て早々僕に喧嘩売るんですか?」



チャンミンが、
フードの縁から覗いた視線で
ギロリとユノを一瞥して睨んだ。



瞳だけしか見えなくても、
声音で苛立ちの度合いは丸わかりだ。



「違うよ、違うって…そんなんじゃない。
ただいつもなんとなく…まあ、いいや」



言葉を濁しながら、
自分の手にはめていた手袋を外すと
ほら、と手袋をチャンミンに
向かって差し出す。



「何ですか、これ」



「見れば分かるだろう。
こんなに寒いのに手袋もしないで…
手冷えてるだろう?」



差し出された黒い手袋を
ちらりと一瞥したチャンミンは
かすかに目を眇めると、
素っ気なく「大丈夫です」と言って
再び前を向いて歩き始めた。



「遠慮するなよ」



「失礼な。
僕はそんなにヤワな鍛え方
してないですから」



ユノは背後から
チャンミンの手を見つめた。
重い荷物の持ち手が食い込んだ指は
痛々しいほどに赤くなっている。
袖からのぞいた手の甲は色を無くしている。



刺すようなこの寒さの中、
言葉通りにはとても見えないのに。



「相変わらず素直じゃないな」



わざと聞こえるように言っても、
チャンミンは聞こえないフリをして
早歩きで大通りに向かって歩き始める。



諦めたユノは、
再び手袋を自分の手にはめ直すと
チャンミンに声をかけた。



「あ、チャンミナ、そこ曲がって」



チャンミンが弾かれたように
ユノを大きく振り返った。
フードを深くかぶっているせいで
周りがよく見えないらしい。



フードのすきまからチラリとのぞいた
長いまつ毛に縁取られた大きな瞳。
利口そうで、澄んでいて。



子鹿みたいに可愛い。



思わずそう言いそうになったのを
ユノはぐっと我慢した。



「可愛い」なんて言おうものなら
間違いなくチャンミンは
不満そうな顔をする。



可愛いなんて言うのは、
いい加減もうやめてくださいと
激しく言い返されるのも分かっている。



「ここで寄り道ですか?
何か買い忘れでもしたんですか?」



不機嫌そうなチャンミンの声を
聞きながら、相変わらずユノは
可愛い、可愛いを心の中で
連呼し続けていた。



久しぶりに見る実物の恋人は、
画像なんかはるかに上回る愛らしさだ。



「当たり。
買い忘れたものがあって」



「もうこんな時間なのに…
それって家の近くでは
買えないような物なんですか?」



「残念だけど、
家の近くには売ってないんだ」



「このへんでは買えて、
家の近くでは買えない物って
一体何なんですかそれ…」



立ち止まってついたため息が
そのまま大きな形になって、
チャンミンの姿をかすませた。



「だからリストアップしとけばいいのに」



「書き忘れたんだって」



仕方ない人ですね…と、
チャンミンは言われたとおりに
大通りから一本逸れた細い通りに曲がった。



荒れた路面の少し暗く狭いその通りでは
ほとんどの店がすでにシャッターを下ろしていた。



「ヒョン、
もう開いてる店なんてないですよ。
どこの店なんです?」



「あれ?おかしいな」



だからちゃんと…と言おうとした
チャンミンの口から次の言葉は出なかった。



強く手を引かれて店と店の隙間にある
狭い通路に引きずり込まれた瞬間、
そのまま肩を壁に押しつけられ
フードの陰でユノに唇を重ねられる。



「…ただいま、チャンミナ」



触れるだけの淡い口づけをして、
唇をそっと離しながら、
囁くようにユノが言った。



「じゃ、行こうか」



まるで何もしなかったように
閉じ込めていた腕をあっさりと解き、
再び通りのほうに身体を向けたユノの視界に
チャンミンの膨れっ面が入ってきた。



「なんですか今の。
こんな所で…あなた正気ですか」



「そうだなあ。
誰かに見られたら面倒だよな」



「わかっててこんな…」



「大丈夫。大丈夫。
だからこれ以上はしない」



にっこり微笑み返したユノに
苛立ったようにチャンミンの唇が歪んだ。
不意打ちを食らった彼の足元は
不安定に揺らいでいた。



「なんとなく、
恋人同士らしくしたくて」



「…恋人同士らしく?」



「だって恋人同士が再会したら
キスと抱擁がお約束じゃないか」



その言葉にチャンミンの目が
大きく見開かれる。



「一一いい加減にしてください!!」



チャンミンは突然大きな声を上げて
ユノの胸ぐらを思い切りつかんだ。
せわしなく吐き出された息に
二人の周りが白く煙っていく。



思いもかけないチャンミンの剣幕ぶりに
ユノは本気で首を傾げる。



「…そんなに怒った?」



チャンミンが
あまりにも複雑な表情をしているために
ユノは恐る恐るそう尋ねた。



やがてチャンミンは足元をにらんで
ぼそりとつぶやいた。



「久しぶりのキスがこれだけですか。
中途半端に煽られるくらいなら、
しないほうがまだマシですよ」



「…は?」



聞いた言葉を反芻するように
噛みしめたユノは目を丸くした。
どうやらキスしたこと自体を
怒っているわけではないらしい。



「だって場所が場所だから…
それに誰かに見られたら困ると…」



「僕がそれでもいいって言ったら?」



「いや、さすがにそれはまずい」



「僕がいいって言っても?」



「いや、それだけじゃなくて、
さっき煙草を吸ったばっかりなんだ。
おまえ、煙草の匂い苦手だろう?
だから家に帰って歯を磨いてちゃんと…」



チャンミンの唇が
悔しげに固く引き結ばれた。



「確かに煙草の匂いは苦手です。
苦手ですけど…っ」



チャンミンはそう言うやいなや、
再び唇を奪おうとユノの肩を鷲掴みにした。



「だから、待てったら」



すんでのところでユノは
自分の手のひらで唇を覆った。



そしてチャンミンの瞳が
みるみる悲哀の色に染まるのを見て
呆然とした。



前から煙草は吸っていた。
それでも隊に入ってからは、
喫煙本数が桁違いに増えた。



身体にも独特な男の世界の匂いと
煙草の匂いが強く染みついているような
気がする。



環境が環境だから普段は気にしないが、
さすがにチャンミンがその匂いを
どう感じるかは甚だ疑問だ。



出来ればチャンミンには
煙草の味が強い口づけはしたくない。
たとえ我慢出来ずに
最初に仕掛けたのが自分だとはいえ。



チャンミンは強くユノの肩を掴んだまま、
絞り出すように言った。



「僕、ずっと思ってたんです」



会えるだけでいいと思っていたのに。
やっぱりそれだけじゃ足りなくて、
あっさりしたキスが物足りないなんて
まるでわがままだと自嘲する。



でも、今日は言ってもいい気がする。
許してもらえそうな気がする。



「煙草の匂いは苦手ですけど…
その…僕は前から、
煙草を吸ってる時のあなたって…」



「煙草吸ってる時のオレ…?」



凝視されて言葉を反復されて、
チャンミンはぐっと言葉に詰まった。



ずっと心の中にしまっていたことを
今日は思い切って言葉にしよう。



そう心に決めて、
あらためて真っ正面からユノの両肩を
がっしりと掴み、
大きくすうっと息を吸い込むと、



煙草の匂いと嗅ぎ慣れたユノの匂いが
すっと鼻を抜けて胸の中を
暖かく満たした。



ヒョンの匂いだ。
焦がれてやまなかったヒョンの匂いだ。
これはこれで全然嫌いじゃない。
むしろ好きだ。
大好きなんだと分かった。
離れてから気がついた。



「煙草を吸ってるあなたを見る度に
すごくセクシーで、
かっこ良くてたまらないって、
…ずっとそう思ってました。だから、」



思いもかけない言葉を聞いて、
ユノはぽかんと口を開けていた。
そんなユノの肩をしっかりと握りしめて、
チャンミンは「だから、だから」と
何度も繰り返す。



おろおろ言葉を紡ぐその瞳は
うっとりと潤んで見えて、
甘い輝きを宿している。



「だから、煙草臭くてもいいんです。
今の僕にはヒョンが足りないんです。
ああ、どう言えばいいんだろう。
なんかうまく言えないんですけど、
目の前にいるあなたが、
そのままでいいって
今日はなんだかすごくそんな気分で、
あなたを見た途端に心臓が飛び跳ねて、
おかしいですよね、何度も会っているのに。
普通にしてなきゃってずっと思っていたのに。
喋るだけで少し恥ずかしい。
それなのにバードキスが不満だなんて
今日の僕はなんだかすごく変なんです…」



自分で言っているうちに
だんだんと訳が分からなくなり、
それに気づいたチャンミンが
不安に思い始めた時、
ユノは穏やかな瞳で彼を見つめていた。



「あなたの匂いも体温も
何もかも全部自分の物にしたいって…
今日の僕はなんだかおかしい…」



チャンミンの消え入るような声に、



「おかしくなんかない」



とユノは優しく笑った。



「おかしくなんかないよ」



手袋をはめたままの指先を伸ばして、
フードを少しだけずらすと、
ユノはチャンミンの短い髪を
そっと撫でた。



「チャンミナ、それが」



ユノが双眸を穏やかに細めた。
チャンミンを引き寄せて、
鼻先を近づけて、
唇同士が触れるか触れないかの
距離になる。



可愛い。
やっぱり可愛くてたまらない。
アラサーのこんなに大柄な男が。



目を見開いたままでいる
チャンミンの呼吸に
かすかな煙草の名残がふと混ざった瞬間。



ユノが低く掠れた声で
続きを囁いた。



「それが…
好きって気持ちなんだから」



チャンミンの手から
どさりと荷物の袋が落ちたが
それを拾うことは許さなかった。



身体ごと強く押さえつけるようにして
深く深く二人の唇が重ねる。
チャンミンの冷えた頬を包む手袋越しに
ほんのかすかにユノの体温が感じ取れた。



「オレの匂いでよければあげる」



答える代わりに
さらに強く抱きしめ返して
チャンミンは一度息を吐き、
そして深く深く吸い込んだ。



素のままのユノの匂い。



汗と煙草と色香と、
何もかもが混ざり合い立ち上るそれに
チャンミンは存在を確かめるような
深い充足感をおぼえていた。



焦がれた口づけは、
今までのどんなキスよりも苦く、
そしてユノの匂いに満ちていた。



「…ああ、あなたの匂いだ」



口づけの合間に
泣き出しそうな声で言われて、
ユノは困り顔のまま何度も何度も
口づけを繰り返した。



チャンミンは子供のように鼻を鳴らし、
浅い呼吸を繰り返し、
ユノの全てを取り込もうとする。



その様子があまりにも健気で、
どうしようもなく愛おしさが増していく。



口づけしながら、
かすかに漏れる湿った音を聞きながら、
ユノは幸せだと思った。
自分は今、幸せを抱いていると思った。



「…どう?少しは満足した?」



額と額をぶつけて、
からかうようにユノに囁かれ
チャンミンは言葉にはせず、
照れ臭そうに苦笑して見せた。



「…さて、今度こそ行こうか」



身体を離し、微笑みながら
ユノは散らばってしまった荷物を
足元に整えはじめた。



チャンミンが再び荷物を持とうとすると
ユノはそれを制してはめていた手袋を
口元で引っぱり素手になった。



「チャンミナ、両手、かして」



言われるがままに、
チャンミンはユノの前に両手を差し出した。



ユノは手袋をダウンジャケットのポケットに
無造作に突っ込んでから、
チャンミンの両手を自分の両手で包み込んだ。



「…やっぱりすごく冷たくなってる」



チャンミンの両手を口元に持ってくると
ユノは大きく息を吐きかけながら
温めようと何度も手をさすり始めた。



暗がりで人通りはないものの、
こんな場所で男二人が手を取り合っていたら
誰の目にも怪しいことこのうえない。



やがてチャンミンは落ち着きなく
辺りを見回し始める。



「ヒョン、あの、もういいです…
手袋かして下さい」



「やっぱりまだ冷たい?」



ユノは困り顔で言うなり
チャンミンの手を自分のジャケットの
左右のポケットにそれぞれ突っ込んだ。



「そうじゃなくて!」



チャンミンは慌てて手を引き抜こうとしたが
ユノが渾身の力を込めてそれに反抗した。



「やめてください!
女の子じゃあるまいし!
手袋があれば大丈夫ですから!」



「女の子じゃないからだよ」



ユノはポケットに入ったままの
チャンミンの手を見つめたまま、
寂しそうに笑う。



「…男と女だったら
こんな暗くて寂しい場所で
こそこそしなくてすむのに。
駅のホームで堂々と会って、
普通に手をつないで、
お互いのポケットに手入れて…
堂々とあっためられるのに」



ユノの低い声は、
どこまでも優しかった。



明るい光の中を。
街中の喧噪の中を、道行く人々の間を。
手をつないで歩くことが、
自分達にとっては夢のまた夢。



恋人の冷たくなった手を
当たり前のように温めあうことも
今の二人にはひどく難しい。



ユノの気持ちを汲み取った
チャンミンが柔らかく微笑む。



「…それでも僕は、僕が男で、
あなたが男で良かったと思っていますよ」



チャンミンはやがて、
聞き取れるか聞き取れないかの
小さな小さな声で呟いた。



「それにもう少しだけ我慢したら、
僕達はまた一緒にいられるようになりますし。
僕はもうそれだけで」



「…チャンミナ」



「それ以上に望むことなんて
何もないじゃないですか」



なんてささやかな願いなのだろう。



熱を帯びていく心とは同時に、
なんとも言えない痛みが
ユノの胸をちくりと刺す。



幸せは甘いだけじゃない。
疼くような痛みも甘受しながら
二人で作り上げていくのが
本当の幸せなのかもしれない。



そう思いながらユノは、
はは…と嬉しそうに笑って、
それは嬉しそうに笑って言った。



「確かにそれが一番だ」



時が来れば、
誰に何をどう言われようとも、
ずっと一緒にいられるのだ。



指先はもうしっかり温まったのに
なかなかそこから動くことが出来なかった。



口づけの余韻が去っても、
ポケットの中で密かに重ね合わせた手を
お互いにほどくことが出来ない。



そうだ、とチャンミンが
思いついたように顔を上げた。



「たくさん食材買っておいたんです。
今日は何でもあなたのリクエストに
お応えしますよ」



ユノがいたずらっぽく笑った。



「リクエストは料理だけ?」



「料理以外でも」



「料理よりそっちが先がいい」



「…僕もです」



はにかんだチャンミンの答えを受けて
ユノはふっと優しい笑みを浮かべる。



微笑みあった二人は、
ようやくポケットから手を出した。



温め合った愛しい手を今だけ離した。



ユノがチャンミンに手袋を差し出し、
チャンミンが黙ってそれを自分の手にはめた。



ほんの数秒だけ、
手袋をはめた自分の両手を見つめてから、
チャンミンは笑みを浮かべてユノを見た。



離した手の代わりに、
再びそれぞれの手が重い荷物を抱えた。



ユノが半歩先を歩き始め、
うつむき加減で歩くチャンミンが
その後ろに続いて歩く。



二人は何もなかったような顔をして
友人同士のような距離をとり、
大通りに向かって再び歩き出した。



























…終

















































いつも来てくださる方、
ふらっと立ち寄って下さった方、
ここまでおつきあいいただき
ありがとうございました。

今週がみなさんにとって
素敵な一週間になりますように。

画像はお借りしました。
ありがとうございます。