大好きな兄のために妖力修業を始めた千吉でしたがが、術らしい術は教えてもらえず雑用ばかりの毎日に、不満が爆発寸前です。
そんなある日、弥助に子妖を預けた化け獺が、期日を過ぎても迎えにきません。
兄との時間を邪魔されて腹が立った千吉は、双子を巻き込んで化け獺を捜す決心をします。
可愛くてちょっぴり怖い妖怪ファンタジー、“妖怪の子、育てますシリーズ”第2弾です。
表題作と2編の短編が収録されています。
「千吉と双子、修行をする」
「馴れ初め」
「親達の夜更かし」
前作『妖怪の子、育てます』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12719087832.html)では、弥助が太鼓長屋から大家の久蔵の家の離れに移って、妖怪の子預かり屋を続けながら、千吉と名付けた赤ん坊を育ることにしたこと、千吉が6歳とは思えない落ち着きと物腰を備えた美少年に成長したこと、千吉が久蔵と華蛇族の姫・初音の双子の娘の天音〔あまね〕と銀音〔ぎんね〕と共に奇怪な神にまつわる事件に巻き込まれ、自分の無力さを痛感し、大好きな兄の弥助を守るための力を得るために、妖怪奉行所西の天宮の奉行を務める犬神の長の朔ノ宮〔さくのみや〕に弟子入りを決意したことなどが描かれました。
この作品は、朔ノ宮に弟子入りすることを許された千吉と天音と銀音の3人を朔ノ宮の従者の犬神の鼓丸〔つづみまる〕が迎えに来る場面から始まります。
こうして3人は毎夜、修業のために西の天宮に行くことになります。
しかし、西の天空では朔ノ宮のおやつを作ったり、西の天空の四連と呼ばれる北星〔ほくせい〕の黒蘭〔こくらん〕、東雲〔しののめ〕の蒼師〔そうし〕、西空〔さいくう〕の白王〔はくおう〕、南風〔はえ〕の朱禅〔しゅぜん〕という犬神たちの遊びに付き合ったりと雑用ばかりで、一向に術らしきものを教えてくれる気配がなく、千吉の不満は募ります。
朔ノ宮に弟子入りして2か月ほど経ち、ようやく一つだけ教えてくれた術である千香の術も、千吉には何の役に立つものなのかわからず、その苛立ちは募っていました。
そんなある日、弥助のところに化け獺〔かわうそ〕のつおが訪ねてきます。
つおの娘のちおは生まれつき足が悪く、宗鉄先生に診てもらったところ、薬でよくなるが、今、その薬の材料を切らしていると言われため、つおは自分で材料を集めることにしたとのことでした。
そして、その材料の最後の一つが少し危ない場所にしかないので、そこに行っている間、ちおを預かってほしいと弥助に頼みます。
ところが、2日か3日で戻るはずだったつおは7日経っても迎えに来ず、弥助との時間を邪魔されて腹が立った千吉は、天音と銀音の双子と鼓丸を巻き込んで、つおを捜すことにします。
前作と同様にこの作品でも人間の業の醜さが描かれます。
また、ラストでの千吉の行動から、千吉の一端が窺われ、物語の続きがさらに楽しみになりました。
「馴れ初め」では、犬猿の仲(狐と犬ですが……)である2人の妖怪奉行、東の地空の月夜公〔つくよのぎみ〕と西の天空の朔ノ宮の出会いが描かれます。
月夜公と顔を合わすと凄まじい喧嘩にしかならない朔ノ宮が秘めている思いが印象に残る掌編です。
「親達の夜更かし」では、千吉と、天音と銀音の双子が西の天空に行って留守の夜の弥助と久蔵の交流が描かれます。
大人になった弥助と、弥助と久蔵の親ばかぶりが微笑ましい掌編です。
表紙と登場人物紹介、本編中のイラストは、前シリーズの作品、前作と同様にイラストレーターのminoruさんです。
千吉、天音と銀音、朔ノ宮と鼓丸、つおとみおなどが描かれています。
minoruさんのツィッターはこちらです→https://twitter.com/minoru200
[2022年10月4日読了]
“妖怪の子預かりますシリーズ”の作品を紹介したページは次のとおりです。
第1作『妖怪の子預かります』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12435526546.html)
第2作『うそつきの娘』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12436893193.html)
第3作『妖たちの四季』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12437337420.html)
第4作『半妖の子』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12438266694.html)
第5作『妖怪姫、婿をとる』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12439216510.html)
第6作『妖怪姫、狩りをする』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12440392361.html)
第7作『妖怪奉行所の多忙な毎日』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12441593538.html)
第8作『弥助、命を狙われる』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12487018191.html)
第9作『妖たちの祝いの品は』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12568498727.html)
第10作『千弥の秋、弥助の冬』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12608800871.html)