副題は、“鍋奉行犯科帳”。
主人公は、大坂西町奉行所の奉行で大食漢で美食家のため“大鍋食う衛門”とあだ名される大邉久右衛門。
食の町・大坂を舞台に、鍋奉行・大邉久右衛門の活躍を描く時代小説シリーズ第4作です。
3話が収録された連作短編集です。
第一話「ご落胤波乱盤上」
第二話「浮瀬騒動」
第三話「京へ上った鍋奉行」
物語の語り手は、これまでの3作と同様に第一話と第三話では、西町奉行所の若き同心・村越勇太郎が務めます。
今回登場する料理は、天ぷら(「ご落胤波乱盤上」)と寿司(「京へ上った鍋奉行」)というユネスコの無形文化遺産の和食を代表する料理が登場です。
前者では、先代将軍・徳川家治のご落胤を称する天六坊なるものが現れるという一大事の中、貧乏飯屋の業突屋のトキ婆さんからもらったハゼの天ぷらが口に合わない大邉久右衛門は天ぷらをおいしくすることに熱中しています。
2つのストーリーをつなげる作者の腕が見事です。
後者では、公家たちの大騒動を大邉久右衛門と村越勇太郎が解決します。
私のお気に入りは、珍しく料理ではなく日本酒が主役の「浮瀬騒動」です。
珍しいのはそれだけではなく、この話では、勇太郎が登場せず、また大邉久右衛門もあまり活躍しません。
その代わり、勇太郎の母・すゑと綾音が恐喝事件に挑みます。
この他、定町廻り与力の岩亀三郎兵衛、大邉家の用人の佐々木喜内、奉行所の料理方の源治郎、村越家の家僕の厳兵衛、勇太郎の手下で役木戸の千三、勇太郎を綾音と争う小糸などおなじみの顔ぶれも登場します。
前作以上に、ミステリ色は薄くなり、大阪の料理とそれを育む風土と人情を描く側面が強くなっています。
京へ上った鍋奉行 (集英社文庫)/集英社
¥670
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表紙のイラストと作品中の挿絵は、これまでの3作と同様にイラストレーターの林幸さんです。
表題作「京へ上った鍋奉行」の場面が描かれています。
林さんのウェブサイトはこちらです。→http://kou884h.wix.com/884kou
[2015年1月28日読了]
“鍋奉行犯科帳シリーズ”のこれまでの作品を紹介したページは次のとおりです。
第1作『鍋奉行犯科帳』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20130718.html)
第2作『道頓堀の大ダコ』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20141220.html)
第3作『浪花の太公望』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20160220.html)