「蜘蛛の巣」(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20091022.html )、「幼き子らよ、我がもとへ」(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20091027.html )に続く7世紀のアイルランドを舞台にしたケルト・ミステリ“修道女フィデルマシリーズ”の邦訳第3作。原作のシリーズでは4作目にあたる作品です。
女子修道院で、頭部のない若い女性の死体が見つかった殺人事件と、その事件を調査するために、海路、修道院に向かう途中で遭遇した、乗組員全員がいきなり消え失せたかのように、無人で漂う大型帆船の事件という陸と海の二つの事件が平行して起こり、美貌の修道女フィデルマはこの謎に挑みます。
待望の新作ということで、積ん読状態の数十冊(大げさ!)の未読の本を脇にどけ、真っ先にこの本に取りかかりました。
期待どおりの心地よさを味わうことができました。
この作品、これまでの“修道女フィデルマシリーズ”と異なり、人間の醜悪さがこれでもかと描かれ、少し食傷気味になる箇所もあります。
しかし、その分、より勧善懲悪的な色彩が強くなっているように感じます。
もちろん、作者の仕掛けた二転三転するトリックにより、単純な勧善懲悪の物語になりませんが…。
今回、フィデルマは登場人物の心の動きを探って、謎解きに挑みます。
その謎解きを軸に、このシリーズの特徴である“古代アイルランドにおけるキリスト教のケルト派とローマ派の教義上の争い”や、“美しい南アイルランドの自然を描く風景描写”などが巧みに織り込まれており、とても楽しめる作品となっています。
また、この作品の途中からワトソン役として、サクソンの修道士エイダルフ登場しますが、途中、エイダルフとの再開を待ち望むフィデルマには、これまでにない女性らしい魅力が感じられました。
巻末の解説で、田中芳樹氏が“フィデルマの高飛車なところが好きになれなかった”と書いています。
そういう読者も多いと聞きますが、私はフィデルマのそういうところ結構好きです。
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風邪気味だったので、この週末はほとんど自宅で過ごしました。
したがって、この作品は、最近では珍しく自宅で読んだ作品になりました。
ただし、最後の50ページほど(ちょうど、フィデルマが謎解きをする場面です)は、今朝、通勤電車の中で読みました。
[2009年11月30日読了]