「まひろっ!!ちょっとこれやばくない!?」


うっとうしい夏の暑さが教室中を覆う、昼休み。




下敷きでパタパタと扇ぎながらぼーっとしていたあたしに

クラスの子がだいぶ興奮した様子で、雑誌を見せてきた。



見ると、表紙には、自信ありげな顔でポーズをとった、あいつの顔。

目次の次のページからは、見たくもないあいつのナルシスト表情ばかりの連続ページ。


うわ…


思わず顔を背けたくなる。



「今月神田くん特集だって!!!超やばいんだけどー!!!」


顔を真っ赤にして叫びながら、ボンボン飛び跳ねるその子を

何事かと教室にいるみんなが見た。


ちょっと、騒ぎすぎだよう。



そして


「え?!神田くん特集なの!!??やっば!!!」

「えーあたしも見たーい!!」

「うわなにこの綺麗な顔ー!!!!」


と、続々とその子の周りに女子が集まってきた。




雑誌の中で、唇の右端をあげながら笑っているそいつの顔。


こんな気持ち悪いやつが連続で何ページも載ってるなんて、

寒気がする。







教室の暑さはちょっと異常なくらいなのに、

腕に鳥肌が立ってきた。



あたしは下敷きで扇ぐのをやめると、

イスからガタンと立ち上がり、自販機のジュースを買いにいくことにした。






ーみんなは、あいつの正体を知らないんだ。






神田優。


幼なじみ。



そいつは、昔から女子にキャーキャー言われていた。


幼稚園時代から、すでに女子同士での取り合いが始まり。

小学校時代は、ある女の子のペンをそいつが拾ってあげただけで、

その女の子はいじめられ。

中学校になると、すでにファンクラブが出来ていた。

そして、芸能なんとかプロダクションにスカウトされた。


本人は何回か断っていたみたいだけど、

あんまりそのスカウトマンがしつこかったから

芸能界入りを決めたとか何とか。




それからは、すぐにCMに抜擢されたり、

ある学園ドラマに出るやいなや、

人気があっちゅーまに出て。


今や、雑誌にもドラマにもバラエティにも引っ張りだこ。



『爽やか王子系男子。こんな美形、見た事無い!』という感じに。



認めたくはないけど。

顔だけは…

ほんとに顔だけは…… 得なやつ。




『紳士で爽やか』なイメージで売ってるけど。



あたしは、こいつの正体を知っている。



だって、こいつはー




ブーッ ブーッ ブーッ




スカートの右ポケットに入ってるケータイのバイブ音が鳴りだした。


周りに先生がいないことを確認して、ケータイを開く。

うちの学校は基本、ケータイ禁止という校則だ。



見ると、『新着メール1件』の表示が。


何だろ。



ポチッ




ボタンを押した次の瞬間、あたしの顔はいっきにしかめっ面。





…………げ。



心の中でも噂をすれば。



"あいつ"だ……






【裏庭にいるからちょっと来い。】





………は?


裏庭……?



意味わかんない。



何でこう、命令口調なのかな。




そのまま無視してケータイ閉じてやろうかな。




そう考えてたら。


またケータイがバイブした。




【来ねーとこないだの数学のテストの点数
 お前のかーさんにばらすぞ】



…………





ええええ!!!!ち、ちょっと待った待った待った!!!



卑怯な手使うなクソが!!!!



くっっそ!!!


…あんにゃろーーーーーー!!!!




あまりの悔しさに、地団駄踏んだ。







「覚えてろっ!」