38歳、大きな病気もなく、大きなトラブルもなく、またひとつ歳を重ねる。
有難い。
歌を歌うことができて、
新しい歌を覚えることができて、
新しい訳詞を書くことができて、
新しい痛みに寄り添い、
新しい悩みに向き合い、
新しい笑顔に出会い、
新しいことが経験と思い出になった。
昔はよく分からなかった言葉を、 ただの言葉ではなく理解できる瞬間があったような。
昔はよく分からなかった歌が、 なぜ長く人々に愛されるのか分かるようになったような。
昔はよく分からなかった感情を、 少し離れた場所から見つめ、整頓できるようになったような。
大抵のことは正解かどうかの判子がもらえるわけではなく、 正解なのか分からないまま翌日が来る。
それでも樋口亜弓として、矢向亜弓として過ごした38歳は終わる。
一度きりの人生は短く、前にしか進めない。
自転車で坂道を駆け下りるとき極端に減速するのは、 不意の事故で死なないように。
まだ生きてやらなければならないことがあるし、 やってみたいこともある。
やがて終わる人生だからこそ、 今日咲いている花の美しさに気付きたい。
また一年、 土を掘り、 土を耕し、 新しい芽を植えたり、 根腐れしたものを引き抜いたり。
耐えて育つ草木に水を与えながら、 自分自身も育てていけるだろうか。
せっかくだから、書いておけば良かったと思う前に書いておこうと。
38歳、最後の日。
今日までの全て、おかげさまです。
感謝を忘れずに、39歳、もっと良い歌手になります!!
矢向亜弓