猫ねこモロッコ (2) | セ、セ、センスがイイネ!

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味わい重視のフィルム勝負 / Voigtlander Vitessa-T + フィルム

 

 

モロッコへはフィルムカメラを三台持参しました。

 

真四角写真の中判フィルム用に、Minolta AutoCord L

35mカラーフィルム用に、Voigtlander VITESSA-T

そして、モノクロ用が、Rollei 35

 

なぜフィルムかと言うと、色々と思うところはあるのですが。

 

まあ、古い金属カメラ、かっこいいからね。

 

ただのおっさんだってアーチストっぽい気分になれるからね。

こう、眉間に深いしわを刻んで、そこらの観光客とは一味違うんだぞ、小難しいこととか考えているんだぞ、と。

そういう雰囲気をかもし出すことが出来るのです。

 

で、そんな雰囲気をかもしつつ飛行機を降りた結果。

 

税関で止められて、別室送りにされました。

 

フルマニュアルの古カメラ、そりゃピントだって外しますにゃん

 

それもまあエモかろうと。アートと言い張ればアートかなと

 

 

テレビのドキュメンタリーでよく見かけますね。

『激録!税関24時』 みたいなやつ。

生肉やら生野菜やらの検疫逃れ、そしてスーツケースの二重底に隠した白い粉やら茶色い樹脂を見つけられ連行されるやつ。

あれです。

ヒュー!クリミナル!

 

別室送りになったのは人生で初の体験でした。

なにせ、世界でも有名な、誉れ高きニッポンのパスポートですからね。

まさか、入国時に止められる、そんなことがあろうとは。

 

思い返せば。

フィンランドのヘルシンキ空港の審査では、審査官が 「アリガト!」と、笑顔と共に通してくれました。

台湾では、入国カードの記入でもたついてたら、「もう!特別だぞ!」とばかりに、外交官用の空いている窓口を通してくれました。

カンボジアからタイに入るアランヤプラテートの入国審査なんて秒でした。

 

そんなうれしい扱いを受けるたび、先人の築いたこの名誉を汚さぬようわたしもしっかりせねばと、背筋を伸ばしたものです。

それが。。。別室送りの憂き目に遭うとは!!

 

別室いやあああ!(イメージ画です、メクネスの穀物貯蔵施設の遺跡にて)

 

や、あのね。

日本からフィルムを大量に持って行ったのですよ。

箱から出して、百均で買った透明なバッグに入れていました。

 

ISO400 の低感度のフィルムですし、最近の機器は大丈夫だという説もあるのですが。

フィルムを荷物用 X 線検査機器に通すと影響が出るという話を小耳に挟んだことがあったのです。

 

それで、入国時の税関検査の際、こっちはハンドチェックでお願いしまーすと軽い気持ちで手渡したのです。

どうもそれが気に障ったようで、係りのお姉さんに 「ついてこい!」 と言われ、別室へと送られました。

 

とは言え。

こちとら、やましいところなど全くない、天下御免のお気楽ニッポン観光客です。

別室送りの物珍しさもあって、時間がかかったらいやだなあと思いつつも、粛々とお姉さんに同行しました。

 

まあねえ。

ヨーロッパ世界とイスラム世界の接合点であるモロッコの空港です。

テロリストへの警戒は厳重でしょうし、たしかに空港内に目を走らせれば、いやに目つきの鋭い私服係官らしき男たちがうろうろしています。

きっと日本人の想像も及ばないような、権謀術数にしてバイオレンスな日々が繰り返されているんですね!

 

大変そっすね、おつかれっす!

 

メクネス、お土産屋前は猫遭遇率が高かったです

 

 

室内にはいくつかの検査機器が置かれた大きなテーブルがあり、そこにヒゲで太っちょの中年男性が座っていました。

失礼しやっす、おつかれっす!

でもほら、人畜無害お墨付きのニッポン観光客だし、できるだけちゃっちゃとお願いしやっす!

 

「この袋か。なんだ、これは?」

 

「フィルムっす!こっちのが 35mm でカラーとモノクロ、こっちのが中判のロールフィルムっす」

 

ほら、あのね、こういうカメラに使うの、あなたもご覧になってということで。

かばんからカメラを三台取り出して、テーブルの上に並べました。

これに入れて写真を撮るんですよー。

 

「なんだ、お前、プロか?」

 

「やだもう、てへへへ!アマチュアですよ、カメラが好きなだけっす、てへへへ!」

 

「へえ。で、なんで検査を拒否したんだ?」

 

や、拒否なんて、とんでもございません。

X 線検査はフィルムに悪いらしいから、念のため、目視検査をお願いしたのでございます。

そんなことを英語で説明いたしました。

 

えーと、X 線検査機器って何ていうんだったかしら?

レントゲン、は独逸語ですね。

X-Ray machine?

 

「何を言っているんだ?英語をしゃべれ」

 

。。。あぁ!?

 

てめぇいま何つったコノヤロウ、モロッココノヤロウ!

 

ジャパニーズ義務教育の英語をナメてんのか!

おれの英語もあれだけれど、おまえの英語も大概じゃねえかコノヤロウ!

 

大体なあ、さっきは流したけどなあ?

おまえぐらいの年齢なら、確実にフィルムの時代は知ってるだろうが!

何を 「生まれたときからデジタルですー」 みたいな、若者ぶってんじゃねえぞコラァ!

 

フィルムで撮るとエモいんじゃコラァ!メクネス旧市街

 

夜のタジン鍋屋さん。ISO400 でも戦えなくもないんだぞコラァ!

 

 

人畜無害のニッポンジンの仮面をあっさりと破り捨てたわたしに、重い二眼カメラをぶん回しかねない雰囲気を感じたのでしょうか。

太っちょモロッコ係官は面倒くさそうに、三十分ほどで無罪放免としてくれました。

 

お互い、英語を母語とする者同士ではありませんからねえ。

正しい単語も、難しい言い回しも、相手に伝わらないのなら意味がない。

 

国際言語としての英語を考えた場合。

話し手側は、伝わらなかったら、他の言い回しで伝えられないかを考える。

聞き手側は、相手が何を言おうとしているのか、想像力を働かせて理解に努める。

 

そういった姿勢が肝要であろうと思います。

あの太っちょモロッコ係官にもその辺をよく考えていただきたいものですね。

 

そんなモヤモヤした気持ちを抱えつつ、しかし砂漠への期待に胸をふくらませ。

わたしは電車でカサブランカ駅、そして古都メクネスを目指したのでありました。

 

そして、ここまで書いて思ったのですが。

今回の話、猫、まったく関係なかったですね。

タイトル詐欺か!

 

なので、猫だらけだったメクネスの穀物貯蔵施設遺跡の写真ですにゃーん

 

こんな施設ですけれども

 

やたらと猫がいまして、のんびりしてました

 

旅はのんびりと行きたいものですなあ

 

モヤモヤすることもあるけれど、砂漠へと向かう朝は、二重の虹が見送ってくれました