チョ・ナムジョ著(斎藤真理子訳) 「82年生まれ、キム・ジヨン」を読みました。


キム・ジヨンはティーンの頃をIMF危機下に過ごした、比較的平均的な韓国人女性。そして韓国は家父長制の名残を強く残した社会です。


その彼女が、解離性障害のような、産後うつのような、メンタルの壊れ方をして、精神科にかかり、その生育歴の聞き取りを通して、現代韓国人女性の苦悩、特に女性ならではの苦悩を炙り出していきます。


小さな女性差別が少しずつ降り積もって、それでも真面目に生きてきた彼女。出産とともに退職しますが、「味噌女」とか「ママ虫」とか、夫の稼ぎに寄生する女といった意味の揶揄を受けたりします。


家父長制の時代から、女性も教育を受ける権利を享受し就職もあたり前になる時代へと変わっていっても、底辺には出産で戦力が落ちる女性より男性を重んじる意識、いやもっと底に男尊女卑の意識がみえ隠れする韓国社会。


そこで生きる女性達は多くのフラストレーションを抱えています。


でも、これは韓国だけの問題ではなく、濃淡はあれ、日本でも同様のことはあります。いえ、他の先進国ですら、同一線上の問題点は皆無とは言えないような気がします。


育児はどうしても女性の負担が大きくなりがちで、自己実現とどう兼ね合わせるかは、あるいは経済の問題とどう両立させるかは、一筋縄ではいかないからです。


これに、女性を下に見る潜在意識が社会の底に流れていて(文化により、個人により差はあれど)、特に悪意はなくまた男女を問わず家事は女性の仕事との思い込みがあったりすれば、女性の立場はしばしば辛いものになります。


一般的に「性の商品化」と言えば、概ね商品にされるのは女性の方。


ただ、当人が、別に世の中このようなものと受け流しつつ、世の中の実をとるバイタリティでかわしていくことができれば(小説内のジヨンの母 オ・ミスクがその例)まだ救いがあるのでしょうが、世の中の理不尽や不公平感に苛まれはじめ心の奥深いところまで傷ついていくと。。。


解説によると、韓国では男性だけに徴兵制があるために、逆差別を感じている男性も少なくないとか。


どっちの性も、いや性とか関係なく不幸を抱えやすいのが現代なのかもしれません。


現代というのは情報社会で、自分以外の人の情報が可視化され過ぎて、比較が容易すぎるので、不公平感に苛まれやすいのかも。いいか悪いかは別にして「知らぬが仏」。


さて、小説には落ちがあって、キム・ジヨンの精神科の主治医には、教授も狙えるような才能ある眼科医の妻がいるですが、この妻も、子供が発達障害の可能性があるために、教授になるどころか、医師の仕事さえ諦めてしまうというエピソードが語られます。自分ではどうすることもできない大きな壁というのが人生至るところにあるのですね。


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