原田ひ香著「財布は踊る」を読みました。

財布が色々な人の間を渡り歩き、その持ち主達にまつわるストーリーが紡がれるという構成。

このパターンは、馳星周著の「少年と犬」(犬が渡り歩く)や、有吉佐和子著の「青い壺」(青磁壺が渡り歩く)などが思い出されるのですが、もう少し立体的な展開。

最初は、普通の人の「お金」にまつわる欲望のダークサイドがリレーされていきます。

リボ払い、メルカリ、情報商材マルチ、投機、セミナー、仕手、投資、窃盗、転売、特殊詐欺、等々。

ここに、ややチマチマとした節約も絡みます。

渡り歩くのは、主人公葉月みずほのイニシャルM.H.入りのルイヴィトンの財布。


財布は、同じイニシャル(ほぼ同じイニシャルを含む)の人達の間を行き来するのですが、持ち主となる人物は直列的にではなく、やや交錯的に登場します。


登場当初、彼らは大概お金に振り回され、心身をすり減らすようにして生活している状態で、貧すれば貪す的なギスギスした心情に、読み手の心もやや荒むのですが、途中から物語に変化が現れます。


彼らの中で、主人公をはじめ複数の人間は、いわば正しいマネーリテラシーを身につけて、なんとか主体的な人生を手に入れるようになっていくのですね。


経済的に大きく成功するとばかりは限らないものの、望む仕事を見つけたり、奨学金返済に振り回される人生を軌道修正させたり、満足な家庭を持ったりと「お金」だけではない人生の意味を見つけていくのです。


一方そうはいかず、「お金」に翻弄され続ける人生を送る人もいて、その分かれ目は結構微妙です。

さて、こういった展開でのお約束として、さまざまな人の間を渡り歩いたものは、最後は最初の持ち主の元に戻るのですが、この小説では一捻りされていました。

彼女は成長していたのですね。


ただし、この成長が単純なハッピーエンドに繋がるのかどうか、そこに含みを持たせているところが、なかなか面白いと思いました。


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