佐藤大介著 「13億人のトイレ」を読みました。
コロナ禍の2020年5月に出版された新書で、取材はコロナ禍前からその走りにかけて行われたものと思います。
インドといえば、昨今、経済成長が著しく、IT企業やIT人材を多数輩出している国。
平均年齢もまだ若く、世界最大の人口を誇る国。
日本のビジネスパートナーとして、今後期待の持てる国。
古い歴史。カレーとガンジス川。パキスタンと不仲。一方で、衛生面はどうなのかな?と思ってしまう国。
でも余りよく知りません。旅行でインドに行くと、もの凄くハマる人と、二度と行かないという人と、二手に分かれてしまう印象がありますが、そんなインドの現在を真正面からではなく、「トイレ」という切り口を通して取材したのが本書です。
13億人中11億人(正確には契約数)がスマホを持っているのに5億人がトイレ無し。
どうしているのかというと、野外排泄。そうなるとやはり河川や地下水を汚染し、衛生面に大きな問題を孕みますし、用を足しに出たところを襲われる(特に女性)という問題も起こります。
国をあげてトイレを作ればいいじゃない、と思うかもしれませんが、下水道がインフラとして完備するとか、汲み取りシステムが公共サービスとして整っているとかとセットでないと難しいですよね。
実際に、モディ首相の号令の元、「スワッチ・バーラト」という莫大な予算を組んだトイレ設置運動が繰り広げられたのですが、数値目標だけが一人歩きする「なんちゃってトイレ設置」とか、賄賂とか、補助金横領とか、野外排泄者吊るしあげ(果ては撲殺)とか、色々。
背景には、半端のない貧富の格差、文化として根付いているカースト制度などがどっしりと横たわっています。
そもそもトイレは不浄の場。敷地の中には作りたくないし、家から離れたところで排泄して肥料として浄化されるのを待つ発想が宗教ともリンクしてあり、それが長く当たり前。仮に家にトイレを作るとしても、設置費用が高額。多くの貧困層にとっては食べる方が優先。補助金が支払われたとしても、下水道が完備していないので排泄物をタンクに溜めて、誰かがそれを掃除しなくてはならない。他に頼めば費用がかかる。その清掃業務は最下層カースト(不可触民)の仕事として押し付けられる。さしたる道具も与えられずして。不浄の人として更なる差別を産むし、危険にも晒される。。。
都市部には下水道があるにはあるのですが、全く処理が追いつかず。特に雨季ともなると、そこら辺のものを全て含んだ大量の汚水が下水道システムに集中するのですぐパンク。
まるでこんがらがった糸みたいで、解決は容易ではなさそうです。
本の終わりの方には、問題解決の糸口っぽいものに少し触れられていました。テクノロジーによる解決とか。日本のリクシルによる簡易水洗トイレとか。
このリクシルのトイレは一つ500円位で、重さで開く弁をつけることによって少しの水を使うだけで、匂いの逆流や、虫がたかるのを防ぐようになっている簡易水洗トイレなのですが、そのあとはどうなっていくのかについての記載がありませんでした。
社会の中に解決すべき問題が多数あって(カーストはあってしかるべきと考える人も多いよう)、なかなかに一筋縄ではいかないのだなとの感想を抱きました。
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