小笠原洋子著の「財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス」を読みました。
「節約」x「低年金生活」x「ミニマリスト」x「おひとりさま」x「団地」x「丁寧な暮らし」みたいなジャンルに入るエッセイでしょうか。
なかなか綺麗なカラー写真が散りばめられています。
著者は小さい頃から節約が趣味、というところがあるようで、経済状況からやむを得ず(そういう部分も無いわけではないが)節約を余儀なくされているわけではなさそうです。
高収入の時期もあられたようですが、どんどん物を消費すること自体、性に合わないのか、老後や不測の事態等に備えようという意識が強いのか、コツコツと貯金。
そのうち、本当に少ない年金生活を送る日々となり、節約生活自体がどんどんブラッシュアップされていったようで。
たとえば、成人式のお祝いに晴れ着を作ることを親から提案された時、何度も着るわけではないし、成人式自体もいかないし、むしろ一生着られる上質なハーフコートが欲しいと所望。
実際今もそれを着ているとのこと。流石に変色してきているようですが。
ところどころに滲み出る、著者のメンタリティを推察するに、物質的な豊かさよりも、精神的な豊かさを重んじておられる方のようです。
5椀くらいの入れ子の器と箸で暮らす、修行僧のようなライフスタイルに憧れたり、最も心震える芸術作品は兼好法師の徒然草であり、フリードリヒ作「樫の森の修道院」という絵であったり。
結婚歴はあっても別居婚だったとか、この辺りを読むに至ってある感想を抱きました。
著者は、まさに学生運動、安保闘争あるいはヒッピームーブメントのジェネレーションではないでしょうか。心の自由を渇望し、それを奪おうとする体制に反発するというような。
資本主義の元、巧みな欲望刺激により労働を搾取して人間をがんじがらめにしている今の流れに、抵抗を感じるというような。
一方で、アート関係の仕事に携わってきておられて、審美眼が十分磨かれておられて、工夫して身の回りを好きな物で固めておられます。実家の遺品だったりするのですが、写真を通して見る限り、クオリティーの高いもののように思えます。
ケチ一辺倒というのでなく、心を豊かにするための旅行や外食(かなり質素ですが)には、出費を惜しみません。
今のお住まいも東京でありながら、眼下に緑が広がるような立地で、その贅沢を堪能されておられます。
節約本ではあるのですが、単にそのノウハウを披露するにとどまらず、大量消費社会に流されず自分の真のメンタリティを失わないとはどういうことか、本質的な豊かさを見失わないとはどういうことか、そういったことを少し考えさせてくれる本でした。
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