無敵のナポレオン、勝って勝って勝ちまくりに見えるのですが、実は賽の河原のような勝利なのですね。
その根っこにあるのがイギリス。
強い海軍を有しているので、フランスとしては正面突破では勝てない。
産業革命を成し遂げたイギリスは大量生産、大量消費という次のフェーズに移行しつつあるわけで。
逆にいうと、商品の流通、つまりは貿易が阻害されることはイギリスにとっての致命傷。
そこをつくべく、ナポレオンは「大陸封鎖令」でイギリス商品が大陸に入らないように画策するのですが。
当然それでは面白くないのはイギリス。のみならず、ヨーロッパ大陸諸国にとっても困る事態。
なので、ナポレオンに負けて一度は和平を結んだ国々も、すぐに反旗を翻すことになるのです。
そんな中、子供のできる見込みの乏しいジョゼフィーヌを離縁して、オーストリア皇帝の娘マリー・ルイーズを妻に迎えます。すぐに反旗を翻す、オーストリア相手の政略結婚です。
しかも、待望の後継の男子ももうけます。
ナポレオン、絶頂。
怖いもの無し。
と、同時に守りたい息子、打ち立てたい世襲のナポレオン王朝。この欲が微妙に判断を狂わしていくのかもしれません。
操りにくいと同時に有能なタレイランとフーシェ、この二人を遠ざけます。
そして転換点となったモスクワ遠征。
極寒の地で深追いし過ぎて、フランス軍は大きな痛手を被るのです。
兵が足りない。徴兵に次ぐ徴兵。
いつのまにか、300万人のフランス人が10年に及ぶ戦役で命を落とし、フランス国民の間には怨嗟の声が。
ナポレオンは挽回を図るのですが、タレイランにいわば嵌められて、失脚させられてエルバ島に追放。
この間にマリー•ルイーズと息子はウィーンに、ジョゼフィーヌは病死。
王政復古となるものの、再起したナポレオンが帝位に復位。
ただ、根本的に、対フランス包囲網は消えていないため、再び闘わざるを得ず、ワーテルローで大敗。
パリに逃げ帰ったナポレオンは今度はフーシェに嵌められて。。。
あろうことかイギリスに亡命を図った彼は結局は囚われて、セント・ヘレナ島に幽閉。
この小説、華々しい戴冠式の描写に始まり、やはり華麗な再葬式のパレードの描写に終わります。
しかし、中身のナポレオンはただ華々しいだけでなく、強運に恵まれこそすれ、時に悩んだり、コンプレックスを抱えたり、歳を重ねるに伴う不調を抱えたりと、どこにでもいそうな生身の人間として描かれていました。それでいて希代の英雄。
長編ですが飽きさせない筆致でした。
私のカテゴリ分類【勉強になる本:歴史編】
