半沢直助著『かんぽ生命びくびく日記』を読みました。
著者は金融業界を渡り歩いてきた方で、ペンネームは「半沢直樹」をもじったものと思われます。
著者は、地元志向からメガバンクに「エリア総合職」として入行します。しかし銀行統合でその枠が廃止され、地方銀行や信用金庫、保険代理店を経て、日本郵便に勤務することになります。郵便局勤務は1年ほどと短期間で、その直後に「かんぽ生命の不適切営業問題」が発覚しました。本書はその内幕を暴露する暴走ルポというよりも、著者自身の目線で保険商品の問題点や「働き方」に対する思いを綴ったエッセイに近い内容でした。
私は、これまで保険の仕組みにいまひとつピンときませんでした。火災や事故、死亡など万一の事態に備える、という基本は理解していても、養老、終身、一時払い、変額、外貨建て……と種類が多すぎて分かりにくく、また「人は必ず死ぬのに、なぜ保険会社は利益を出せるのか?」という素朴な疑問もありました。
本書を通じて、そうした疑問が少しずつ整理されました。特に、かんぽ生命の商品は「不適切な営業」以前に、掛金総額よりも受け取れる金額が少ないケースが多い、という事実に驚きました。さらに営業現場では、高齢者への販売ルールを無視したり、二重契約を勧めたり、告知義務を軽視したりする例もあったそうです。
ただ、70歳以上を一律に「判断能力に乏しい」と見なす社内ルールには違和感も覚えました。高齢でも十分に判断力を持つ方は少なくありません。にもかかわらず「十把一絡げ」に扱うのは、かえって不適切ではないかと感じます。
また、郵便局の営業スタイル――家庭訪問で世間話をしながら生活状況を引き出し、預金残高などをもとに保険を売り込む手法――にも強い疑問を覚えました。かつては「親身に寄り添う」姿勢が信頼につながったのかもしれませんが、現代の消費者は個人情報への意識が高く、家庭の事情を外部に知られたくない人も多いはずです。そもそも「信頼できそうな人が勧めてくれるから」という理由だけで商品を買う態度そのものを、私たち消費者が改めなければならないのだと思います。
総じて、本書はかんぽ生命の問題を糾弾するだけでなく、保険商品の仕組みや郵便局の現場の実情を知るきっかけとなりました。保険や金融の世界を理解するうえで、私にとって大変勉強になる一冊でした。
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