織田信長の居城「安土城(後編)」で、当時史上最大の建造物だった「天主」の跡へ向かいます。

二の丸下にある枡形になった「黒金(くろがね)門」周辺は、高い石垣で覆われています。当門を抜けると、「二の丸跡」に入ります。

 

黒金門跡(虎口になっている、江戸時代に積替え)

そこには、「織田信長廟所」が建てられていますが、本能寺の変では信長の遺骨や遺髪は当然ながら見つからなかったので、埋葬はされていません。羽柴秀吉が、一周忌にこの廟所を造営したものです。その他、「仏足石」や謎の巨石「蛇石(じゃいし)」が横たわりますが、詳細は判らないらしいです。

二の丸跡(本丸より地盤が高い)

二の丸内にある信長本廟の入口門

「二の丸跡」から先に進み、左手に「天主」の石垣を見ながら「本丸跡」に入ってきます。現在は、木が多数立っていますが、御殿跡の礎石を見ることができます。更にその奥に石垣で一段高い所が「三の丸跡」となり、「煙硝蔵」「米蔵」跡などがあったようです。

 

本丸敷地全貌と右側は天主跡石垣(昭和15年に積み直し)

本丸跡から三の丸跡石垣をのぞむ

さて、本丸から虎口石段を上った所に、「天主台」があります。周辺は昭和15年に積み直された石垣で囲われていて、そこから地階の穴蔵を見下ろすと、基礎部分が不等辺八角形であることがなんとなく判ります。天主地階(穴蔵)礎石群は、東西10列×南北10列、心柱は掘立柱となっているそうです。ここに、壮大で華麗な「天主」がそびえたっていたと思うと、身震いする思いになります。

 

本丸取付台(天主虎口からの石段から本丸へ降りる石段)

天主地階(穴蔵)礎石群

天主台の礎石群(廻りは1階の石垣)

安土城郭博物館所蔵の「屏風絵風陶板壁画」、発掘調査による礎石配置、発見された「天主指図」等から、推定復元された安土城天主の地上5階と6階部分が、「安土城天主信長の館(文芸の里)」に所蔵されています。この推定復元された望楼部分は、1992年の「スペイン・セビりア万博」に出品され、博覧会終了後ここに屋内展示されました。金沢金箔10万枚と上塗り漆150kgを使用しての復元物です。

 

「安土城天主 信長の館(文芸の郷)」

館内写真をSNS投稿することが禁止されているそうですので、下記の写真は削除しました。

 ・天主五階部分(夢殿とおなじ建築構成)

 ・天主五階屋根と六階部分の金閣のよう

 ・復元安土城天主六階部分(金沢金箔10万枚と上塗り用漆150㎏使用)

 

5階は、正八角形の「八角の段」といわれ、宇宙を表します。柱や天井は全て朱塗りで法隆寺夢殿のような構造になっています。6階は、正方形で、外観は金箔で仕上げ、内部は黒漆塗りになっていて、道教と儒教の教えを描いているそうです。それを眺めても、その意味する所を理解することができませんでした。

 

館内写真をSNS投稿することが禁止されているそうですので、下記の写真は削除しました。

 ・復元安土城天主五階部分(地獄から天国に至る仏教的宇宙観を表現)

 ・復元天守六階内部(道教・儒教で説く治国平天下思想を表した金碧障壁画が狩野永徳が描く)

 

「天主跡」を後にして、一旦「黒金門跡」まで戻り、大手道方向でない道を進み「摠見寺(そうけんじ)跡」を目指します。「摠見寺裏門跡」の石段を上がると、そこは「本堂跡」になっていて、そこからの琵琶湖「西の湖」の眺めは素晴らしいものがありますし、安土が湖上交通の要塞となっていたのがこの景色で良くわかりました。

 

摠見寺跡の裏門への石段

摠見寺本堂跡(信長の菩提寺、築城の際に移築したが1854年に焼失)

摠見寺本堂跡から西の湖、長命寺山、比良山系を臨む

「摠見寺」は、信長の菩提寺として築城の際に移築されましたが1854年に焼失しましたが、「三重塔」と「二王門」は安土城築城以前の棟札が見つかっており、安土城焼失後に、他の寺社からの移築と考えられています。.そして二棟ともに重要文化財に指定されています。

 

摠見寺三重塔(重文、1454年築、本堂跡側から)

摠見寺二王門(重文、屋根入母屋造、金剛力士像も重文で1467年作)

「二王門」を潜り抜けて石段を降りていくと「百々橋口」に出ます。その入口付近には「安土城址碑」が立っています。「百々橋」を渡ったところに拡がる土地は、且つて城下町として栄えた場所でした。

 

摠見寺二王門に至る百々橋口脇の城址碑

百々橋(向こう側は、城下町跡)

安土山をひと廻りをしてきましたが、石垣や石段は発掘状態から復元がされているものの、かつての姿を間近に触れることができます。また、少し離れた場所にはなりますが、前述の「安土城天主信長の館(文芸の里)」を訪ねると、当時建っていたであろう煌びやかな「天主」の望楼部分の復元を、これまた間近に見上げることができます。JR安土駅前にある「安土城郭博物館」では、安土城の推定模型や陶板壁画、信長の肖像画なども見ることができます

 

JR安土駅前の織田信長像

折角安土の町を訪れるのであれば、安土山城跡の現地と博物館や史料館をひっくるめてご覧になられることを、お薦めしたいと思います。