「ドミノ」 恩田陸 [角川書店]
今回は、ゆだるような暑さのじめじめした7月の午後の東京駅を舞台に、なんのゆかりもない人たちの行動がほんのちょっとした「偶然」が積み重なってどんどん大きくなってゆく…という文字どおり「ドミノ倒し」のような、スピード感のあるシチュエーションコメディ。
いやあ、おもしろい!! なんの関係もなかったようなことがどんどん繋がっていく様は、見事。構成が決してうまいとは言えなかった恩田さんですが、こういう作品も書けるんだ。こういうのができるのだったら、「上と外」の終わり方も期待できそう。
個性的すぎるキャラや細かいエピソードの作り込みはこれだけで終わらせるのがもったいないくらい。
とにかく、これは一気読みすべし。ちまちまと読むと話がわかりにくくなるかもしれないので、まとめて時間がとれる時にノンストップで読んでください。
これ、2時間ドラマか、映画にでもしてくれたらすごく楽しいだろうなあ。
ただし、この作品はあの「青いすりガラスの向こうの世界を覗きこむような」恩田陸特有の空気とは縁遠い作品です。恩田陸にはそちらを求めてる人は、無理して読む必要はないと思います。
恩田陸をまだ読んだことのない人は、「光の帝国 常野物語」
から読むのをオススメ。もしくは「三月は深き紅の淵を」
が文庫本化したばかりなので、それから読むのもいいかも。