藤沢周平 冬の潮 | カウネット呼ぼう

藤沢周平 冬の潮


市兵衛は息子の嫁・おぬいを実家に戻すことにした。妻を亡くし、息子の芳太郎も川に落ちて水死した後、嫁と舅だけになり、口さがないある種の噂が流れ始めたためである。
おぬいを実家に戻すに当たっては百両を渡した。これで当座困ることはないだろうという市兵衛の配慮である。
だが、一年近くたって、おぬいが両国の水茶屋に出ていることを知った。市兵衛は思いがけないことを聞いた気分だった。