前回…→戦乙女募集中 3より
光里
「ん~~~、久しぶりね、この空気」
所はとあるロストシャードの山中。
隣を歩く光里が気持ち良さそうに伸びる。
ファティマのA-SAT参入が決まったが、私の計画ではあと2人、戦力が欲しい。
誰に白羽の矢を立てようかと勘案したのだが、フェアリーハート隊からこれ以上引き抜くわけにもいかない。
A-SATは東京シャードから遠く離れた宙域へ出向き、接近が予想されるヴァイス群への先制攻撃するのが目的なので、その間留守を預かる守備部隊…フェアリーハート隊は変わらず必要になる。
光里
「やっぱり呪素を含んだ空気は美味しいわ」
このロストシャードは…私達の出身地でもある。
東京シャードと比べて大気組成中に良質の魔力を含んでおり、ここでは魔法教育が一般的に行われ、魔法が生活の中に取り込まれ活用されている。
今回フェアリーハート隊に編入したヴィーシャ、芳佳もここの出身だ。
???
「呪素とはご挨拶じゃな。神気と呼ばんか、小娘」
やはりここにいたか。
だが神気、呪素、魔素、マナ、霊子…呼び方は様々あるが、どれも同じ魔法の源でしかない。
輪島
「お久し振りです、女天狗殿」
女天狗
「おぉ、輪島の小倅も一緒か。久しいのぉ」
見た目は妖艶な美女だが、人間ではない。
人類が地球を離れるより前から生き続けている天狗の女性。
本当の名は人間の声帯では発音することすら叶わず、もし仮に発音出来たとしても、迂闊にその名を発音しようものなら、辺り一面火の海になってしまう…力ある存在。
故に私も「女天狗殿」と呼ばせて頂いている。
女天狗
「して、こんな山奥まで態々来て何用じゃ?」
輪島
「この度は女天狗殿のお力を借りたく…」
………
……
…
こちらの事情を伝え、女天狗の反応を待つ。
女天狗の性格から食い付いてくる可能性は高いが、機嫌を損ねれば命の3~4個は覚悟しなければならない。
女天狗
「つまり妾に宇宙で物の怪退治をしろ、と?…ふぅむ、そうじゃの。山の暮らしも飽いておったところじゃし…退屈しのぎには良かろう」
まずは興味は持ってもらえたようだ。
~東京シャード アッパーシャード~
女天狗
「何じゃこれは?こんな馬鹿でかい鉄の塊を担いで戦うのか?」
プロフェッサーT
「こいつぁただの鉄の塊なんかじゃぁ…ナイ。天狗ちゃんのエミッションを圧縮して撃ち出す機関さ!」
プロフェッサーTは恐れも知らず、何時もの調子で話しているが、あの説明では女天狗は理解出来ていないだろう。
初めて見るだろう、ハンガーにかけられたギアを説明していく…が、恐らく実際に持ってもらうのが手っ取り早い。
女天狗
「ふむ、見た目よりも軽いのじゃな。して、こっちは手足に付けると宇宙でも息が出来ると言うのじゃな?何とも面妖な」
女天狗の神気…つまりエミッションが作用してスーツのアクチュエーターが起動し、本来なら100kgを超えるような武装も重量を感じることなく装着出来るようになる。
女天狗
「ほぅ!これは楽チンじゃな。羽ばたかんでも飛べるのか」
まずは新しい玩具を気に入ってくれたようだ。
女天狗
「して、その物の怪はいずこに?」
女天狗はニタリと獰猛な笑みを浮かべるが、まずは動作確認代わりに近隣の宙域を軽く飛んでもらう。
女天狗
「まったく人間もなかなかやりおる。こんな鉄の塊で神通力を使おうと言うのじゃからな」
一層興味が湧いたのか、ギアをしげしげと眺める。
その時。
格納庫にも警報が伝わる。
プロフェッサーT
「何よ?どったの?」
突如東京シャード近域に大型ヴァイスのドライブアウト反応、観測班からストリック高レベル個体の出現が告げられる。
すぐにフェアリーハート隊へのスクランブル発進を手配するが、シャードへの被害は免れないだろう…。
女天狗
「何じゃ?アレを倒せば良いのかえ?」
確かにまだギアを装着したままの女天狗なら、すぐに出られるだろうが、ドレスギア戦闘の経験も無しにあのストリックは危険過ぎる。
女天狗
「ほぉ?甘く見られたものじゃな。見たところ大した妖気も感じぬ。任せておけ」
機械生命体から妖気が出るものなのか。
それを判断基準にされては危うい。
だがこちらの制止をひらりとすり抜けて、意気揚々と宙に出てしまう。
ストリックは体表面に多数のトゲを纏い、近接戦闘を退ける反面、それを武器として体当たりを仕掛けてくる。
だが女天狗は神通力で操る炎をギアで増幅して撃ち出して応じる。
女天狗
「なかなか楽しかったぞ」
やはりこの方には敵わない。
そして同時に心強い味方を得ることが出来た。
あとひとり…。
さて、どうしたものか。
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