前回…→戦乙女募集中 2 より
輪島
「本当に宜しいのですね?」
シミュレータの強度は危険度90。
ティタニアでも単騎で挑むとなると、危うい水準だ。
………
……
…
「お待ち下さい!」
会議室の扉を跳ね開けたのはファティマだった。
ファティマ
「私もA-SATに加えて頂けないでしょうか」
薫子
「ファティマさん、会議を盗み聞きするのは感心しないわ」
ファティマ
「その点につきましては謝罪致します。ですが舞様が危険な任に就くと聞いて居ても立ってもいられず」
ファティマが早口で捲し立てるように心情を語るに、かつて命を救ってくれた舞が死地に赴くなら、自身が舞を守る盾になりたいと言う。
ファティマの参戦は戦力としては有難いが、諸事情あり出来れば危険な作戦には起用したくないと言う腹の内もある。
輪島
「分かりました。では…一勝負しませんか?」
提示したのは戦闘技能試験。
シミュレータではあるが、かなり難度の高い設定にして、単騎で挑んでもらうことにした。
ファティマは思慮深いが熱血なところもあり、得てしてそう言う気性の人物は「勝負事で決めた事はきちんと守る」傾向が極めて強い。
課題をクリア出来なければ諦めてもらう。
勝ち抜けたら参入を認める。
単純明快な取り決め。
指定したシミュレータのコースはかつてフェアリーハート隊が攻略した宙域から抜粋。
本来なら3マンセル、ティタニアでも2マンセルで臨むくらいだが、それを一人で挑んで頂く。
実際、A-SATの任務にはこのくらいの地力は必要になるので、無理難題に見えるかもしれないが、こちらとしては誠意を持った提示ではある。
ファティマ
「一番機、ファティマ・ベトロラム、行きます」
対するはセルケトの特異型。
ファティマもハードパンチャーではあるが、向こうも攻撃力では引けを取らない。
高い集中力が求められる乱打戦。
冷静に激しく。
機関銃の撃ち合いのような応酬を制したのはファティマ。
…少し戦い方が変わっただろうか?
双剣の乱打は変わらないのだが、何かが違う。
視野が広くなっているような、安定感を感じる。
その違和感の正体は次のエリアで判明する。
ファティマが展開したHDMは、何時もの超性能爆弾ではなかった。
そして繰り広げられる射撃戦は、こちらも文字通り火の出るような激しさだった。
視野が広がっていたのは、射撃での戦い方を身に付けていた為か。
だが次はどうだろうか。
セルケト特異型以上の攻撃力を誇るVWヘヴィのジェズル型。
真っ向からの撃ち合いで敵う相手ではない。
引っ提げてきた新型HDMで迫りくるジェズルを迎撃するも、重い鉄塊が振り下ろされる。
このタイミングでは回避が間に合わない…!
今のは…バリアなのか。
あの加速度で迫る圧倒的質量を受け止めても揺るがないとは信じがたいが、途方もない強度を持っているらしい。
そしてそのままジェズルを撃ち崩す。
交戦時間わずか30秒の電撃戦。
ファティマ
「如何でしたか?」
にこり、と艶やかな微笑みがモニター越しに向けられる。
どうやらこの勝負、私の完敗らしい。
輪島
「おめでとうございます。A-SATは貴女を歓迎します」
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