前回…→共鳴する宙8
輪島
「お帰りなさい。皆さんお疲れ様でした」
アクトレス3名、星守2名、それとシルフィーⅡ。
全員が戦いで疲弊して、這々の体で帰還する。
もっと深く労いたいのだが、それ以上の言葉が出てこなかった。
正直、明日翔に加えトラベルオーダーの技術で魔改造された楓と舞、この陣容でも戦力が足りないとは、今回の戦いの激しさを振り返ると身震いする。
この宙域にフェアリーハート隊で臨んでいたら、一体どうなっていただろうか。
プロフェッサーT
「まずは全員メディカルチェックだ。シルフィーはラボでメンテナンス。さ、行っといで」
そう言って人払いする。
少し間を置き。
プロフェッサーT
「輪島ちゃんを呼んだのは他でもない」
アッパーシャード到着から間を置かずに開戦したので、まだ呼び出された目的を聞いていなかった。
プロフェッサーT
「今見てもらった通り、ヴァイスの進歩は速い。これからはもっと強いヤツも出てくるだろうさ。だからチャン僕たちはそれに備えなくちゃならない」
プロフェッサーTが1通の計画書を差し出す。
表題には「Actress Special Assault Team計画」と銘打たれている。
内容に目を通し概要を把握するに、上級アクトレスによる特務戦隊の設立案のようだ。
A-SAT(エー-サット)は先制攻撃によるシャード防衛を目的とした部隊で、少数精鋭による機動戦隊としての運用を旨としている。
プロフェッサーT
「あんなヴァイスをシャードの近くで迎撃なんてリスク、負いたくないのさ。力を貸しちゃくれないかい?輪島ちゃん」
明日翔をその隊員として、そして私を隊長としてスカウトする。
それこそが今回の出頭要請の目的。
どうする?
確かにあのヴァイス群の危険さは、文字通り身をもって体験した。
今後、あれと同等の戦力と遭遇すると言うのなら、この計画は確かに必要なものだろう。
…是非も無し、か。
輪島
「…お引き受けしましょう」
プロフェッサーT
「恩に着るよ」
さて、そうなるとやらなければならない事が幾つか出てくる。
まずはA-SATのメンバー選定。
今回臨時で星守まで動員して尚、際どい戦いだった。
つまりこの先の戦いに万全を期すなら、もっと戦力が必要になる。
だがA-SATの特性上、無闇やたらに頭数を増やすわけにはいかない。
明日翔達と肩を並べられるだけの実力者を発掘する必要がある。
イメージとしては、明日翔、楓、舞をそれぞれ班長として3班9名による編成が妥当か。
だがこの戦いについて来れるアクトレスがどれだけ居ることか。
エニグマ等トラベルオーダーによる技術支援もあるだろうが、生半可なアクトレスを引き込むわけにはいかない。
そしてもうひとつがフェアリーハート隊の運用だ。
これまで通りシャード周辺での警護、迎撃を担ってもらう事になるだろうが、私が隊長を兼務していられるかどうか。
この件については薫子に隊長代行を頼めるか、応相談と言うことになるだろう。
まずはメンバー選定が最優先課題だが、それこそが最も悩ましい。
信頼と実績を伴うフェアリーハート隊から引き抜ければ良いが、そうしてしまうとフェアリーハート隊自体が弱体化してしまう。
先程の様に星守に援助を求めるか…?
いや、星守は神樹ヶ峰シャード防衛の要。
19名しかいないのだから、あまり無理を言いたくはない。
では在野のアクトレスに目を向けても、信頼に足る人物に当たるかどうか。
これはヴァイスとの戦い以上のに難航しそうだ。
共鳴する宙 了