前回…→共鳴する宙6


輪島

「何か問題でも?」


プロフェッサーT

「山積み…とまでは言わんけど、中々深刻ではあるね」


まずひとつ。

この上下逆さまの幻覚を見せているナノ粒子。

どうも電気刺激の作用によるものだと言う。


なので長時間影響を受けると脳や神経だけではなく、ギア等の機器類にも悪影響を及ぼしかねないと言う。


プロフェッサーT

「シルフィーのカメラを通しても上下が逆に見えるのはそのせい。人体にも勿論良いハズは無かろうさ。早めにケリを付けてメディカルチェックした方が良い」


そしてもうひとつ。


プロフェッサーT

「この小惑星の内部、ヴァイスミディアムがあるね、こりゃ」


地殻の奥にヴァイスの発生源たる培地があるのではないか、と言う。


だがヴァイスミディアムを破壊するのは容易な話ではない。


フェアリーハート隊に応援を要請するか?

だがフェアリーハート隊も攻撃力に特化したものではないので、総力戦で臨まなければならないだろうが…。


プロフェッサーT

「そこは何とかなるっしょ。ここからシルフィーに結合粒子をなるたけ回してくれないかい?」


シルフィーⅡには超次元に結合粒子をストックしてHDMを同時並列に起動させる裏技があると言う。


プロフェッサーT

「その代わり、以降戦闘参加は出来なくなるのは忘れんといて。一度ラボに戻してメンテせにゃならんから」


疑似エミッションのジェネレータに負荷がかかりすぎてしまうそうだ。

通信機能はまた別の独立した機構なので、音信不通とはならないようだが。



今後の方針は定まった。


「地殻内部への侵入経路を捜索します」


製造したヴァイスを排出する口がどこかにあるはずだ。

まずはそこを特定する。


排出口からはヴァイスも出てくるだろうから、それを撃破して結合粒子をシルフィーにチャージ。


ヴァイスミディアムを破壊する。


………


……



小惑星上で小競り合いを繰り返しながら捜索が続き。


小惑星の上にも夜が来る。

視界も悪くなり、捜索の効率が落ちてしまう時間帯だ。



シルフィーⅡ

「あ!あそこ!何か集まってるよ!(@_@)」


暗くなれば暗視モードに切り替わるシルフィーのカメラが敵影を捕捉する。


かなりの大部隊。

ヴァイスミディアムが近いのかもしれない。


「わたしから行きます!」



脚の速い舞が敵陣に斬り込み近接で撹乱し、機先を制する。




そして舞も明日翔の領域に近付いている。
巧みに攻守を入れ替え、敵に狙いを絞らせない。

この連携に着いてこれると言うのなら相当腕を上げているのは間違いない。

「インバス!特異型です」

…厄介なヤツが出てきた。

通常のインバスも初見殺し(ルーキーキラー)として有名だが、これは更に輪をかけて面倒だ。


特異型は待っていても「裏」を見せない。
自分から回り込むか、強引に裏返す必要がある。

あまり時間をかけたくない場面だが、どうしても時間がかかってしまう。

こうしている間にも明日翔達の身体は蝕まれ、ヴァイスミディアムからは新たなヴァイスが生産される。


明日翔
「インバス特異型、撃破しました~」

だが間髪を入れずヴァイスワーカーによる波状攻撃が始まる。




激しく重い圧力に負けじと敵勢力を押し返していくが


ワーカーの群れに混じっていたヘヴィ亜種、ジェズルの強襲に舞が撃墜されてしまう。

インバス特異型とは真逆の面で厄介なヤツが出てきた。

ヴァイスワーカーのヘヴィはその圧倒的な攻撃性から、アクトレスの間でもトップクラスの脅威度で認識されている。

「よくも!」


激昂した楓が打って出るが…焦燥が視野を狭めたか、精彩を欠いてしまい渾身の一太刀も及ばず。

「無念………あとを、お任せします…」


僚機を失い、明日翔がひとり翔ぶ。

シルフィーを出すか?
だがここでシルフィーを失ってしまうと、ヴァイスミディアムが破壊出来なくなる。

プロフェッサーT
「おっほ!すげぇな……やるじゃん文島ちゃん………こいつぁ想定以上だ!……いいね!面白い!」

明日翔のバトルログをチェックしながらプロフェッサーTが喝采しているのだが…うるさい。

プロフェッサーT
「カッカなさんな輪島ちゃん。こいつも次への布石さ」

まだ何か奥の手があると言うのか。
だとしても静かに出来ないものだろうか。


明日翔
「ジェズル撃破しました~」

だがまだ戦いは終わらない。


この小惑星上で初めて観測されたネルモス特異型。

ナノ粒子散布の元凶。

明日翔のステータスを確認。
まだ余力はある。

ネルモス特異型とは1回、交戦経験があるが、それでどれだけパターンが構築出来たか…明日翔を信じるしかない。



ネルモス特異型は子機による攻撃の後、子機を吸収(?)して本体が攻撃してくる。

致命的な攻撃は明日翔も既に理解しているようで、細かい被弾はあるが、そうした要点はきちんと対処している。


明日翔
「ネルモス特異型、撃破しました~」

何とかこの難局、乗り越えてくれたか。

はぁ、と大きく息を吐く。
息をすることさえ忘れていた。

隣ではプロフェッサーTが拍手喝采している。

戦いは終わったが、まだ作戦は終わっていない。

次回…→共鳴する宙8