前回…→共鳴する宙2




輪島
「攻撃開始」

それぞれが配置についたところで開戦の号令を発する。

右舷側はやはり楓が一歩下がり、舞が単身で敵陣を切り裂く。


プロフェッサーT
「ありゃ?なんかおかしいな?」

プロフェッサーが開戦から間もない辺りで、計器を訝しむように注目している。

プロフェッサーT
「…輪島ちゃん、すぐに皆を引き上げさせられるかい?」

唐突にプロフェッサーから作戦の中止と撤退の提案を受けるが、既に明日翔も舞も敵陣深くに食い込み、易々とは逃げられない。

楓は戦闘に参加していないので、すぐにでも下げられるが…。

理由を問うと、プロフェッサーも正確な事は分からないようだが、この宙域で重力波の乱れが検出され、それが増大傾向にあるらしい。

長く留まると、フィールドで保護されているアクトレスと言えど、安全が保証出来なくなる規模だと言う。



輪島
「明日翔さん、舞さん。作戦内容の修正を。当該空域の制圧を5分以内に完了し、即時離脱。やれますか?」

楓は舞のフォローに入らせようかとも考えたが、消耗が激しいので即時離脱を命じる。
逆に舞の負担になりかねない。

明日翔
「は~い、頑張ります~」

「はい。任せて下さい」

ここでも舞の変化が見て取れる。
以前の、私の知る舞ならもっと…「何とかやってみます…」のような気弱な返答が返ってきたはずだ。


舞の戦い方を観察する。

見た目の変化もインパクトがある。
本来の真っ白な、プリマを思わせるギアから真っ黒な…まるでブラックスワンの様なギアに。

そしてその容貌に違わぬ獰猛さ。

瞬く間に敵を平らげていく。


明日翔も本来なら防御用のギアを多用して、普段には無い強引さで押していく。



舞の動きを見ていて、ギアの構成にふと気付く。

トップスはシールドピジョンを配置して、防御するだけでなく、攻撃を受けると炸裂して反撃している。
リアクティブアーマーのようなものか。

ボトムスもただ連装ビームを打ち出すだけでなく、瞬間的にスラスターにエネルギーを回し加速性を与えるのと同時に、フィールド出力も補強している。



果てはこのHDMだ。
持ち前の加速力で一気に射程に捉えると、集束ビームで敵を撃ち抜くと同時に、やはりこちらもフィールド出力へ大きくエネルギーを回している。

全てが攻撃と防御を同時に展開しており、まるで隙がない。

こんな高性能なギアを造れるとは…トラベルオーダーの技術を甘く見ていたかもしれない。

舞が自信を持って戦いに挑めるだけの性能を有しており、そしてその自信が舞本来のポテンシャルを引き出している。


作戦時間を1分40秒残し、余裕を持って空域を離脱する。

一方の明日翔は



元からして持久戦タイプなので速攻は苦手とするところ。
空域をエリアに区切り、チェックポイント毎に時間管理をしているが、どれもギリギリの戦いになる。

それはこちらも承知の上だが、やはり手に汗を握らざるを得ない。

丁寧に確実に。
急がば回る、それが明日翔のやり方だ。


こちらは47秒を残して作戦行動を完了。

舞は既に撤退を始めており、もう直東京シャードに帰投するが、明日翔はこれから。

輪島
「プロフェッサー、時間は?」

プロフェッサーT
「大丈夫、文島ちゃんも間に合いそうだ」

こうしている間にも重力波は増大を続けている。

一体何が起ころうとしているのか。


3人がラボに戻った頃、それは始まった。

プロフェッサーT
「さてさて、何が出てくるかな」

重力波の変動…それは何者かがドライブアウトしてくる兆候だが、アクトレスの防護フィールドを押し潰しかねない規模となると…。

輪島
「小惑星…?」

そこに現れたのは、天体と言って良いだろう。
岩塊と言うには、あまりにも大きすぎる。

これをヴァイスが呼び寄せたと言うのか?

プロフェッサーT
「はーっはっは!面白い!!興味深いな!!!コイツは!!!!」

プロフェッサーTはコンソールを凄まじい速さで操作して観測を進める。

プロフェッサーT
「ほぉ!そうか!!そう来たか!!!」

けたたましく喜びを顕に小惑星と向かい合う。

プロフェッサーTの哄笑が響き渡り、私とアクトレス3名はそれを胡散臭げに見守ること、約20分。

プロフェッサーT
「大体分かった」

この短時間であの小惑星が解析出来たと言うのか。

プロフェッサーT
「あの天体は…そうだな、魔空空間みたいなものだ、って言ったら分かるかい?」

輪島
「つまりヴァイスの戦力が3倍になる、と?」

プロフェッサーT
「いいねぇ輪島ちゃん、話が早くて」

後ろで聞いているアクトレス3人はキョトンとしている。
流石にこの例えはうら若き少女達には通じないだろう。

だがその脅威度はどう表現しようとも変わらない。

深層のヴァイスが更に3倍の強度を持つとなると…最早アクトレスで太刀打ちするのは…。

プロフェッサーT
「まー3倍ってのはモノの例えだが、それでも並みのアクトレスじゃキツいね(ニヤリ)」

そう言うと私の後ろに視線をやり、明日翔達を見る。

つまり「並み」ではないアクトレスなら…と言いたいのだろうか。

プロフェッサーT
「そ言うコト。それじゃ行ってみようか」

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